体験談(約 21 分で読了)
あの日のこと~仙台ワンナイト(1/3ページ目)
投稿:2022-06-05 20:19:20
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その日はひとりで居酒屋で飲んでいた。カウンターの端で店の喧騒を耳にしながら。やがて隣にカップルが座った。女は目を引く美形で服のセンスもいい。男の方は学生がまだ抜けきっていない感じでいささか不釣り合いな感じがした。海産がウリのこの店の貝の刺身が来ると、女が話しかけてきた。「それおいしそうで…
マリとオレはお互いに予定のない限り、週末はどちらかの部屋で過ごしていたが、季節の節目などには近郊の温泉に投宿したり、遠出では和歌山まで車を向けたこともある。都心を避けて出掛けるか、部屋に籠るかのどちらかを好み、休日くらいは人混みに身を置きたくない、ふたりともそう思っていた。昨夜から、マリはオ…
大学のサークルの後輩が結婚することになった。と言っても30歳を越えたいい男である。
久しぶりのひとり旅も良いものだと、杜の都仙台へと向かった。
披露宴は洒落たレストランで執り行われ、新郎側の先輩ということでスピーチまでさせられた。
オレもマリとのことをキッチリ考えなきゃならんな、とひな壇の2人を眺めていた。
2次会も終わり、サークルで可愛がっていた奴が、このあとせっかくだからブンチョウ行きましょう、と誘ってきた。
まだ、宵の口、ひとりホテルに帰っても飲みに行こうと考えていたところだ。
国分町、名前は耳にしていたが、どんなところなのか行ってもみたい。せっかく羽を伸ばせる機会である。
「センパイ、東京の銀座とか六本木でばかり遊んでんでしょ。それには負けるかもしれませんが、ブンチョウもなかなかおもしろいですから」
樋口というこの男、ひと昔前から馬があい、学生時代はよく連れ立って飲み歩いた。
あの頃は金もないから、居酒屋で酔いを回して月イチに池袋あたりの安キャバに行けば良い方だったが、今はヤツも大手ディベロッパーの仙台支店で羽振りが良さそうである。
「いい子いる店ありますから、そこ行きましょう」
はじめて訪れた国分町もなかなか大したものである。
通り沿いに飲食店ビルがズラリと立ち並んでいる。
それでもひと頃よりは、勢いが無くなったと樋口は言う。
通りから角を曲がったビルの店へ連れて行かれたが、なかなか凝ったつくりの店である。
「ここ、いつもきてるんです。へへ」樋口が照れ笑いする。
「いい店だな、落ち着いてて」
「ブンチョウはね、東北じゅうのかわいい子集まってくるんですよ」
「へぇーそうなのか、東京へ来ずに?」
「東京は別世界で怖すぎるからって……ここなら安心するみたいなんです。ま、ここでワンクッション置いて、東京へ行くコもいますけどね」
「ふーむ、なるほどね…」
樋口の高級銘柄の焼酎のボトルが運ばれてきた。
なにか別のモノを飲みたいが、女の子が来てからにするとして、焼酎に付き合う。
ふたりの女の子が黒服に伴われて席についた。樋口の指名している女はなかなかレベルが高い。オレに着いた女は、とびっきりの美人ではなく、どこか垢抜けないところがあるが、妙に男好きするタイプである。
「梨奈です、はじめまして」少しハスキーな声、経験上こういう女の子はエロい。
「今日は、大先輩が東京からやってきましたので、国分町を視察しに来ました」
樋口がグラスを持ってひとり乾杯をしようとしてる。女の子の飲み物はないが、オレもグラスを掲げる。
「おいおい、大先輩って……おかしいだろ、フツーにセンパイでいいだろよ」
「東京からなんですね…なんかひとめでわかりました。東京の匂いさせてたから」梨奈が言う。
「ナニ?その東京の匂いって……どんなのよ…とりあえず、みんなで飲もう」
メニューをもらい、値ごろなシャンパンとつまめるフードを頼む。
マリが戻り、オレの命の炎がともされた。マリのいない時間は禁欲、いや欲さえ湧かない日々を過ごしていた。
仙台行ってもワルいことしちゃダメよ、マリは笑いながら見送ってくれた。
ワルいこと……夜の女の子がいる店に足を向けると、ついそのワルいことをしたくなる気がフツフツと湧いてくる。飲みに出るという行為自体が久しぶりでもある。
樋口は自分の焼酎を口にして、女の子ふたりとオレのシャンパンはすぐに空いた。
すぐ次をオーダーする。
「都会の匂いって感じです……ちょっとだけ危険な感じで、オシャレな」
梨奈がシャンパンを飲み干して言う。客へのお世辞もよくトレーニングされてる。いい店だ。
「ハハハ、オレはただのサラリーマンだよ…ちっとも危険じゃない」
「いいえ、ただのサラリーマンじゃないでしょ、その時計、スーツ、カバン、靴……田舎だとね、どこかの社長サンにしか見えないから」
「……」
たしかに悪くない稼ぎを身の回りに投じてはいた。
スイスの腕時計、裏地まで選んで仕立てたスーツ、英国の老舗の鞄と靴。時計は仕方ないが、目立つのは嫌いで、ブランドロゴなどのないモノを選んでいたが、この女、意外に客を見る目を持っている。それにズバリそれを目の前の客に言ってくるのはどうなのだろう。おもしろい女の子だ。
樋口は、お気に入りの女の子と小声で何やら話しをしている。
女の子のいる店で男同士の会話などいらぬということだろう。
黒服が来て、梨奈さんとコールされたが、指名して、ここに居ろと制した。
はじめての街で飲み、はじめて席に付いた女、これも縁だろう。
それに新しい女とまたやり取りするのは面倒だ。
ヴーヴから飲みはじめて3本目になる。シャンパンのグレードが段々上がっている。シャンパンは飲み口がいいが、後始末に困る。酔いが回るのが遅れてやってくる。
「ウイスキーが飲みたい」
本腰を入れて飲みたくなったオレの兆候だ。
「あたしもお付き合いします」
梨奈が殊勝なことを言う。若い子はウイスキーを好まない。
国産のシングルモルトをオーダーする。飲み慣れた銘柄。ボトルを入れても樋口が後片付けしてくれるだろう。
「やっぱり、都会のオトナのヒトですね……」
「ウイスキー飲むのがオトナなのか?」
「ええ…あたしの中では、オトナが飲むモノです…」
スルッとグラスをあけていく梨奈。酒は強いようだが、目が少し潤んで色っぽい。マリ以外の女の色気を久しぶりに感じた。
「梨奈ちゃんはいくつだ?」
いくつに見えます?というオキマリの質問返しはなく、キッパリ24です、と教えてくれた。
そのまま、聞いてもないのに自己紹介トークがはじまり、オレへの質疑応答が続いた。
梨奈という源氏名は、ホントは里奈と書くんですよ、と教えてくれた。地元には多いという苗字は聞いたことのない武家のようなものだった。
みんな名前変えてるけど、あたしは、別の名前で呼ばれても気付かないから……マネジャーが字だけ変えようって付けてくれたという。
本名から生い立ちまで、明け透けと梨奈はオレに話してくれた。
秋田で生まれ大学で仙台に来てから6年、卒業して地元の百貨店に勤めているという。
ただし、所属は東京のアパレルで、一応そこの社員だというが、給料が雀の涙ほどで、夜のバイトをしなければ好きなモノも買えぬという。そのうち東京本社に移動したい、いや東京へ行きたいと願っていた。
「ヤダ、あたしなんでこんなみんな話しちゃったんだろ……聞き上手ですねー」
聞き上手もなにもない。ただ話しを聞いていただけだ。
「東京に来たいの?」
「やっぱ、夢ありますよ……」酔いのせいか、梨奈の言葉つかいも乱れてきた。
「いろんな欲があふれている街だよ」
「お金貯まると遊びに行ってます……渋谷とか、青山とか…東京はみんなオシャレ……ああ、この街のヒトになりたいって思うんです」
「そうか…東京ね……」
六本木の女たち。ほとんどは地方からの上京組である。マリもエリもそうだ。ミズキは東京組だが、彼女はクールに見えて情が濃いところがある。親しい間柄だけに対して心も肉体さえも許してくる。
地方から出て容姿に恵まれ、個性を活かして人気を得た女の子だけに許される六本木の舞台。
その上にはさらに銀座という大舞台もある。
「東京でもお飲みになってます?」梨奈が問いかける。
「むかしは飲んでたけど、最近はほとんど行かないな」
「どこで?……銀座……六本木?……新宿って感じはしないなぁ」
いい読みをしている。
「すごく遊び慣れてる感じします」
「遊び慣れてるというのは、ワルい男という意味だよ」
「ううん…遊び慣れてる男のヒトって……惹かれます……遊ばれてみたいっていうか……」
思わず吹き出してしまった。
「梨奈ちゃん、酔っ払ってきたな」
「なんで笑うんですか?結構マジメに話してたのに……」
子供扱いされたと思ったのか、梨奈は真顔で頬を膨らませる。
「センパイたちも盛り上がってますね…国分町を楽しんでいただけて嬉しいです」
樋口がグラスを持ってご機嫌の顔をしている。その手はお気に入りの腰に回っていた。
「センパイ、そろそろブンチョウ視察も終了にしますか?」
先程入れたウイスキーもボトル半分近く減っていた。
梨奈が酒の相手をしてくれるのが楽しくて、ついオレもいいペースで飲んでいた。
いい酔い心地である。ここには3時間はいただろう。
「美味いラーメン屋ありますから、そこでシメましょう」
会計はオレが支払った。樋口はここはダメです、東京に行った時はゴチになりますから、と言っていたが、シャンパンやウイスキーをオーダーしたのはオレである。キッチリ明細まで印字された請求金額は六本木の相場の半分ほどだった。充分飲んでリーズナブルに楽しめた。
「あたし12時で上がりなんです。もっとお話しできますか?」
梨奈が名刺の裏にケータイの番号を走り書いた。
番号教えてください、という梨奈にオレはケータイを取り出した。
「えっ!ガラケーですか?似合わない」笑われた。
スマホを使ったが、通話が面倒ですぐガラケーに戻した。
iPadを持ち歩いているから不便はない。
それにケータイそのものも旅へ出る時くらいしか持ち歩いていない。
ところ構わずかかってくる不躾な電話が苦手だ。
「……ああ、12時過ぎてまだ酔い潰れてなかったら、話しはできる」
「じゃ……あたし上がったら電話します……約束ですよ」
「……うん、酔い潰れてないことを願ってくれ」
シャンパン3本が効いていた。ウイスキーも後押ししてくれている。いやその前の結婚式ではビールやワイン、日本酒も出ていたっけ。
エレベーターを降りると、外の空気が東京とは違い冷え冷えとして心地良い。東北にいることを思い起こさせてくれた。
「さすがセンパイですね……はじめて来てアフターゲットして…むかしから上手かったですもんね」
樋口が肩を組んできた。気持ちいい酔いだ。
「オレはナニもしてないし、誘ってもいない」
「だから、上手いんですよ、女の子誘うの……」
むかしから、妙に夜の女に好かれることはあった。
仕事の接待で付き合ったソープの女の子に店終わりに待っててと言われたこともあった。
ソープでは何もしなくていい、身体を洗ってくれと頼んだ。
お客さん、ホント何もしなくていいの?と聞かれ、キミに魅力がないワケじゃないと弁解した。事実、そのあと、彼女のマンションではセックスに及んだ。24~5くらいの頃、横浜、伊勢佐木のソープ。
女のマンションは山下公園の近くで、大きな犬を飼っていた。それから半年くらいそこへ通った。人見知りするという犬は、なぜかオレには懐き、山下公園を散歩させたりした。
「自分なんか、アフター行こうって拝み倒してやっと付き合ってもらってますからね」
「なんでだろな」
「センパイはさあ、カゲあるんだ、影……なんか女の子がほっておけないミステリアスなとこ」
「影なんて誰でもあるだろう……ほら」
街灯にオレの影が映っているのを指す。
「それなら自分にもありますッ……」
酔いのせいか、樋口のいうラーメン屋は格段に美味かった。
「仙台は寿司はうまいけど、ラーメンはイマイチなんです。でもここはうまい」
そこでもビールを飲む。それまでの酔いがスッと覚めていくような気がする。
「センパイ…どうするんすか?さっきの梨奈…待ち合わせ行くんですか?自分はこれ食べたらクルマ拾いますよ」
「おまえは、アフターしないのか?ゴニョゴニョ話してたろ?」
「次の約束のことですよ、あの店、あの女にけっこう金落としてますからね…一回だけはやらしてくれたんですけど……2回目が……なかなか……」
「ま、がんばれ…」
さて、12時までまだ1時間もある。ホテルへ帰って眠ろうか。ん?オレはどこのホテルに泊まっていたっけ……。カードキーを探し財布にあるそれを樋口に見せた。
「このホテルはここから近いか?」
「駅のほう寄りですね、いいとこ泊まってますね、さすが高給トリ……」
せっかくのひとり旅、ブッキングサイトでこれはという名の知れた所を押さえた。
レイトチェックアウトの特典が付いていた。
「オレはここに帰ってもう寝る…」
「えっ……いいんですか?もったいない……」
結局そのラーメン屋でもビールを2本空けた。
通りに出ると、ひっきりなしにタクシーが通る。樋口と別れて車を拾いホテルへ向かった。
午後にチェックインして荷物をフロントへ預け、部屋に運んでくれるよう頼み、そのまま結婚式へ向かったから、部屋に入るのははじめてである。
なかなかシックで快適な部屋だ。ターンダウンしてある寝心地良さそうな大きなベッド。
ネクタイやシャツを剥ぎ取り、そこへ転がり込んだ。
シーツの冷たさが心地良く、そのまま眠りに落ちた。
深い眠りの底にいるのに、何かが呼び起こそうとしてくる。
身体は動かない。動きたくない。しかし音は鳴り止まない。無視すると音は止んだ。
しばらくすると、また呼び起こす音がする。電話、オレのケータイだ。
約束、梨奈と約束したんだ。少し意識が戻る。今度は音が止まない。
起き上がり、ケータイを探す。脱ぎ散らかした服、どこから音がしているのか。
立ち上がりスーツのポケットから音の主を取る。
番号だけの着信が点滅してる。
「はい……もしもし……」声がかすれた。
「やっと、出たぁ……もしかして……寝てたとか……?」
「……ああ…寝てた……」
「ひど~い……今、終わって電話したのに……ってか、どこ?どこのホテルなの?」
ホテルの名を言うと、いいとこ泊まってんねぇ、と樋口と同じことを言う。
「起きた?起きてるなら……あたしこれから行っていい?そこに……部屋番号は?」
カードキーの番号は憶えていたから告げる。
「すぐ行くから、起きててね……寝たら、あたし入れないんだから」
そういうと梨奈は電話を切った。
水を飲みたい。冷蔵庫を開けるとミネラルウォーターのペットボトルが2本。
喉が鳴る美味さ。眠りと酔いの両方が引いていくようだった。
時計は0時半を回っている。ほんの1時間の眠り、酔いのせいで深い眠りを得た。
窓際の椅子に座ると、100万都市の夜景が望める。仙台も大都会だ。
椅子でそのまま眠りについてしまうが、ほんのしばらくしてドアチャイムが鳴らされた。
梨奈が来たようだ。
裸のまま、ショーツ一枚で、ドアを開けると、ファンクな女子大生のようなスタイルの梨奈がいた。
ダメージジーンズの度を越して横糸が規則的に裂けて脚がほとんど見えてる。
白いTシャツに黒のベストを重ねている。
「よかったぁ、起きててくれた……」
「起こされたから、起きたよ…」
「うわーいい部屋……ひとりで泊まるのもったいないぢゃん」
仕事の物言いは終わったらしい。
「ひとりでも2人でもおんなじだよ」
「ね、あたしも今日泊まっていい?」
「それは、困ったもんだな」
「Hなこと考えないでよ、あたし、ここ一度来てみたかったんだ…ね、いいでしょ…」
オレは梨奈をどうこうするというより、すぐにでも眠りたかった。
いろいろ話すのは面倒で、ベッドも広いから不都合はない。
梨奈とアフターの約束したのも事実だ。彼女の願いを承諾した。
やったァ、と言うなり梨奈はバスルームを見に行っている。
「ちょっと!ナニこのお風呂!サイコーぢゃん」
何がサイコーなのか、オレも見に行く。
バスタブの壁がガラス張りになっていて、夜景が一望できた。
「おお、いい風呂だな…知らなかった」
「えっ、お風呂も見てないの?何してたの…」
「さっき部屋に来て、ベッドに倒れた…」
「信じられない…」
部屋に戻ると、梨奈は甲斐甲斐しくオレの散らかっていたスーツやらをハンガーにかけてくれた。
「ホント、倒れてたんだ……飲み過ぎだよ」
「ああ、少し飲み過ぎたかもな、とにかくオレは寝る、あとは好きにしていいから…」
歯も磨いてなかったことに気づき、バスルームに行き、顔だけでも洗うことにする。
歯ブラシを使っていると、下着姿の梨奈が入って来た。黄色のTバックの上下お揃いで、
なかなかいいスタイル。男好きするのは顔だけではない。でも眠い。
「ね、お風呂使っていい?」
「どうぞ、オレは歯磨いて寝る」
梨奈はその場で下着を脱ぎ、全裸となってアメニティを物色している。
「あ、これ使ってもいい?」
バスジェルやいろいろなものを手にしている。
「いいよ、なんでも好きに使って」
「ね、一緒入んないの?」
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(2020年05月28日)
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