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あの日のこと~家族への洗礼(1/3ページ目)

投稿:2022-06-23 01:48:55

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本文(1/3ページ目)

ピュア・シュガー◆IIhnI2U
最初の話

その日はひとりで居酒屋で飲んでいた。カウンターの端で店の喧騒を耳にしながら。やがて隣にカップルが座った。女は目を引く美形で服のセンスもいい。男の方は学生がまだ抜けきっていない感じでいささか不釣り合いな感じがした。海産がウリのこの店の貝の刺身が来ると、女が話しかけてきた。「それおいしそうで…

前回の話

金曜ならミズキは間違いなく出勤するはず。そこそこの人気もあるから、1週間前に同伴の申し込みが間に合うかどうかくらいのタイミングだ。さっそくメッセージを送ると、来週の金曜OK!だけど、どうしたの?あたしを誘って……またナンカしたの笑笑ときた。それに対して時間と場所を決めて返信した。あそ…

マリが戻り、穏やかな時間を過ごして、オレは人間性を恢復することができた。

マリのいない無為な日々から一転して世界が光に満ちたものになった。

マリは生きるエネルギーそのものであった。

マリは、突然消息を絶った理由を整然と話してくれた。

ライフワークとしてのヨガのステップアップ、そして自分の行く末を見据えてオレとの関係を距離を置いて確かめてみたい、そんな気持ちを語り、LAとロンドンにいる知り合いを頼りに海外でヨガの研鑽をしてきたという。

なんとも豪放な話しだが、事前にオレに承諾を請えば、反対されるのが目に見えたし、何より本人の決断そのものが揺らいでしまうと思ったらしい。

一度決めたら、火の中へでも飛び込む、マリらしい話しだ。

マリが倉庫業者に預けておいた家具もオレの部屋に運ばれて、完全な同居生活がはじまっている。

帰宅すると、甲斐甲斐しく夕飯を拵えている時もあり、彼女が仕事の時は、冷蔵庫に惣菜が収まっている。

会いたい時に会っていた関係が、いつでもそばにいる関係となっても、マリに厭きることはなかった。

部屋の中にヨガマットを敷いて、全裸でヨガのポーズをとったりしている姿を見ると、さすがに目のやり場に困る。

トイレから出てきたマリが裸の尻をオレの顔に差し出した。

「ほら、……舐めて……舐めてよ、エリのは舐めてあげたんでしょ。あたしのも舐めて」

エリの奴……オレとのことをマリに言ったとは聞いていたが、プレイの内容まで教えていたとは。マリが渡米、渡英する前のことをマリは憶えていた。女はつまらぬことを忘れない。

人生二度目の女の糞を舐めてしまった。その味はエリと変わらぬように思えた。マリの肛門にも茶色の小さな粒がこびり付いている。酸味と苦味が舌に痺れる。だがその後の反応がマリらしかった。

「あー……舐めてくれた。あたしのウンチ……」

そう言うとマリはその痛みをわけて、とでもいうようにオレの口に舌を入れてきた。自分の糞の味も感じている。舐めたオレを愛おしいと思っているのだろうか……。

常軌を逸した行為にオレのモノは出来上がっていた。

「やだぁ、あたしのウンチ舐めて……おっきくしたの……?やっぱ……超変態だね……大好き」

「………おまえが舐めさせたんだろ」

「ウンチって苦いね……」と惚けている。

これ、欲しいとマリが勃起を揉んでいる。

「お尻じゃなく前でね……」

子供を作る約束、そのため最近アナルセックスは禁じられてられいる。

ショーツを脱がされ、マリが乗ってきた。マリの秘所はすっかり潤ってる。

「ヒトに尻の後始末させて、濡らしてるほうが変態じゃね…?」イジメたくなる。

「…‥だって……」

もう言葉は続かない。マリはプッシーで勃起を味わっている。そして最近のマリのお気に入り、それは自分の指を肛門に入れて腰を揺することだ。アナルセックスをしない分、指で楽しんでいる。

だが今日は排泄したばかり。それでもマリは肛門の感触を求めて指を挿れている。中の襞一枚隔てた指先の動きが、オレの勃起に伝わっている。

「ああ……お尻…ヌルヌルしてる……ウンチ」

あまりの、はしたなさにマリ自身が興奮してる。マリに禁忌はないのか……でもその奔放さにオレは魅力を感じている。マリはしばらく肛門を突いていた指をふたりの顔の間に差し出した。

それはやさしい腸液の匂いではなく、大便の匂い、糞の匂いであったが、マリのモノという愛しさがあった。嫌悪する匂いではなかった。

「クッサ~ウンチのにおい……あたしのにおい…」

マリは顔を顰めながらも陶酔してるように見えた。最強のナルシスト……。

変態に見えないド変態とミズキはオレのことを呼んだが、マリこそ変態には全く見えない。

明るく快活で端麗な女。それなのに今やってることはなんだ……。

「……ね、お尻に指いれて……」

マリは嗅いでいる指の代わりにオレの指を要求した。

尻の溝を伝い指を差し込む。ワセリンでも塗ったようにヌルッと指が埋まる。

「あっ……掻き回して……そこ」

プッシーだけでは物足りないのだろう。マリの肛門は快感を完璧に覚えてしまっている。そこには恥も外聞もなく、快楽を求めることのみがあった。

マリはその糞の付いた指をオレの口に押し込んできた。

「舐めて…‥.あたしのぜんぶ……」

いいさ、マリのモノならちっとも汚くない……ぜんぶ舐めてやる。

この背徳過ぎる行為にオレたちは酔いしれた。マリの指を咥え、マリの肛門にオレの指を突き動かしながら、子宮の奥に届かんとばかりに突き上げる。

「ダメ~がまんできない……やっぱり、お尻にきて…早く…」

その言葉を待っていた。勃起の位置を後ろにずらす。マリも尻の位置を合わせた。

久しぶりのマリの肛門。マリの腸壁をかき分けてオレの勃起も喜んで小躍りしている。

「ああ……いい……おしりいい…ズンズンくる……」

「オレのチンコ……マリのウンチまみれになってるな…」

「ヤダ……でもウンチまみれでだして…ンン…おしり…すごく………」

お互いの目指す場所に思いが届いた。マリを抱えて唇を合わせる。マリを吸い尽くしたい。そのまま下からズンズン突き上げる。やがてオレとマリは、ほぼ一緒に果てた。

寝物語でマリはLAとロンドンにいた間、3人の男としたと白状した。

1年の人数としては多くない。

マリのいない間、オレはミズキと一度しただけだ、と正直にこたえた。それもおまえの実家に行った帰りに。そう言うとマリは切なそうな顔をした。

「でもお尻はね、ゼッタイやらせなかった。みんなあたしのお尻狙ってくるの。でも、お尻に痔があるからダメって言って……痔って英語でなんで言うのかわかんないからソッコーで調べてさ…」

とケラケラ笑った。

「マリの尻…みんなやりたかったんだろな…」

「あたしのお尻はね、これしかイレさせてあげない……」

そう言い、オレのモノを握った。うれしいことを言ってくれる。

フランス人の尻好き男のアランは、マリのことをアジアン・ビューティーと呼んでいた。

色白で切れ長の目、博多人形を思わせる顔立ち、それでいて化粧すれば妖艶になる。

外国人からすれば、神秘的な東洋の女に見えるだろう。その尻を散々オレは掘っていたから、マリの尻は、周りにさぞかし色香をまき散らしていたに違いない。

マリはヨガスクールの中でめぼしい男を見つけていたらしいが、そいつらはマリの魅力的な尻をやっつけたいと眺めていたであろう。

見知らぬ異国の男たちへの優越感に浸る。

みんなジェントルな相手ばかりで良かった。

ちゃんとね、コンドームは付けさせたから、とマリは得意気に言うが、尻の貞操を守ってくれたことで嫉妬は全くわかなかった。長い間、若い女が何もしないでいる方が不健康だ。

マリとの結婚には躊躇いはないが、一度失敗しているので、結婚そのものに肯定的な考えがなかった。2年で別れた前の妻、束縛がひどく、性的嗜好が合わなかった。

両親に会って欲しいというマリの要望、それはほんの数ヶ月後に実現することとなった。

健康な女性が、性交し正常に受精し、受胎する。

マリの生理の遅れを聞いてはいたが、それはある夜、帰宅すると、玄関でマリが飛び付いて来て知らされた。

簡易キットで調べて陽性なので、産婦人科を訪ねたら、妊娠を告げられたという。

嬉しいが、男の身には実感が無い。マリは思いが叶って小躍りしていた。

これからはいろいろ身体に気をつけろよ、そんな言葉しか出てこない。

いきなり、これからやるべき事が山積みされた。結婚、両親への挨拶、子供のこと……。

マリの故郷を尋ねるのは三度目になった。最初は、マリとミズキ、エリと共に。次はマリの消息を追ってミズキと共に。そして今回は、マリと共に実家に向かっている。最初にマリの家を見た時、オレは挨拶をすべきかどうか迷った。どう言葉を紡げばいいか、浮かぶものがなくそれをかき消した。そのことが、もう遠い日に思えた。

道すがらにマリの家のことを聞いた。立派な普請の家、数寄屋造りの旅館と見紛う庭も配していた。マリの家系は、かつて石炭坑を有していたという、なるほどお嬢だったのか、今更だが、はじめて聞く話しばかりだった。敢えてオレはそこに触れないようにしてきたのかもしれない。

炭鉱が廃してからは所有している街中の不動産をマンションや貸ビルなどに活用し、飲食店など数店舗経営しているという。それだけで地元では、かなりの資産家だと思うが、これまでマリは一度もそんな話しをすることはなかった。ま、オレも聞かなかったが、彼女は、そのことをおくびにも出したことがない。

マリに聞くと、だって、あたしの家のことは関係ないもん、あたしがしたことじゃないし、と答えられた。そういう潔さにオレは傾けられてきたのだろう。

たしかにこれまで、マリが実家からなんらかの援助を受けたことはなかった。季節の果物などが送られてくることはあったが、彼女は夜の仕事までして、ヨガスタジオを開設していた。オレの援助を快く受け取ってくれたこと。それが、マリの気持ちを思い知れた。

手入れの行き届いた庭を抜けて、ただいまぁ、とマリは老舗旅館のような開戸を開けて入った。彼女にとって実家に帰って来たに過ぎないが、珍しくオレは身を固くしていた。

奥からマリの母親が出て来た。若草色の紬の着物に黒地に矢の模様の帯の姿。旅館の女将が現れたようである。

遠目ではちらと見たが、マリに面影が重なる。色白で肌が年齢を感じさせない。玄関で一礼をすると、長い縁廊下を案内された。廊下のとまりの雪見障子から庭の低木が見える。そのための雪見障子ということか、いちいち造りが凝っている。

まあ、遠いところ、こんな田舎までお越しいただいて、と母親が正座して深々と頭を下げた。

オレも通り一遍の挨拶を返すが、マリは早くそういうの終わって、と言わんばかりの顔をしている。

母親が茶を出してくれたが、茶托に載った蓋付きの茶碗で日本茶を飲むのはいつぶりだろう。

口にしたことのない茶の味を褒めると、母親は麗しい笑顔をみせた。

今回の来訪の趣旨を伝えると、主人が夕方には戻りますので、その時にまた、と言われそれまで、マリの部屋で休んでてください、とようやく解放された。

廊下の奥の一角がマリの部屋だった。そこは洋室二間になっている。

「ああ……さすがにキンチョーしたわ……」オレは大きくため息をついた。

「ま、こういう時は仕方ないよね、かしこまってるふたり見てておかしかった……」

オレはラグマットの上に大の字になった。次は父親に会わなければならない。

「お母さん、美人だなぁ」

「若い頃、もっとキレーだったよ、そうだ、あとで写真見せてあげる」

「オマエの小さい頃のも見せろよ……」

「わかった……探しておく」

マリの幼い頃の話、両親の営みを覗き見たこと…あの母親がアナルセックスをしていた……その父親とも会わねばならぬ……マリの母親が美しいので、どうしてもそのことが頭に浮かんでしまう。

不謹慎、だが事実だった。

最初の緊張がとれて、ついウトウトしていた。マリもそっとしておいてくれたらしい。

目を開けると格子天井の四角が見えた。意味もなくその数を数えてみた。

マリはこの部屋でこの天井を見て眠り、育ったんだ、そう思うと、この部屋も愛しくなってくる。

窓の外には緑の生い茂る庭が広がっている。どういう配置なのか、まるでわからない。

壁の一角が造り付けの本棚になっていた。

ぬいぐるみなどの雑貨も置かれて少女の部屋という感じがする。

高校までマリはどんな本を読んでいたのか、昭和の時代の女流作家のタイトルが並んでいた。今、オレの年で読んでも楽しめるだろう恋愛モノ。随分ませた女子高生だったようだが、最近のマリはヨガやスピリチュアル系の本しか手にしていない。

文学少女だったのは知らなかった。オレの知らぬマリがドンドン見えてくる。

尿意をおぼえたが、どこにトイレがあるのか、ドアを開けても廊下が見えるばかりだ。

仕方なくケータイを取りマリに電話すると、すぐマリが出た。

「もしもし、あ、オレ、あのさ、トイレどこ…?」

マリは大声で笑った。家の中でケータイかけてきて、すぐ行くから待っててと言われたが、2~3分待たされた。平家建てなのに広さが想像できたが、早く用をたしたい。

トイレは今風にリフォームされて、そこだけは和の趣きとは異なっていた。

「なんでケータイかけてきたの?お母さんも笑ってた」

「部屋出ても人の気配ないし、おまえんち、わからないし」

「そうだね、無駄にここ広いからね、こっちくる?」

できればマリの部屋に戻りたかったが、そうもいかないだろう、マリについていくことにする。

最初に通されたのが客間であろう、今度は茶の間に連れて行かれた。一段階、親近を許された感じがした。

マリの母親はソファーに腰掛けていた。オレを見るなり顔をほころばせている。

「おもしろい方ですね、マリにケータイをかけてきて」

「すいません、うたた寝して目を覚ましたらマリがいなかったもので、大声で呼ぶのもどうかと思いまして」

「コーヒーを召し上がりますか?」

「はい、いただきます」

出てきたコーヒーは、また洒落たカップとソーサーに注がれていた。味もその辺の喫茶店も顔負けである。オレはまたその味を褒めた。

「あら、なんでもおいしいって、おっしゃってくれて…お口にあってなによりです」

母親には訛りは全くない。マリが紙に包まれたお菓子を持ってきてくれた。

はい、いただきます、オレはマリにも敬語を使ってしまった。マリと母親が声を上げて笑った。

「あのさ、そんなキンチョーしなくていいよ…ね、お母さん」

「そうですよ、ま、お会いしたばかりですから仕方ないよね、でもなんでもおっしゃってくださいね」

母親は優しい笑顔をしてくれた。玄関の開く音がした、様子を見に母親が立って行った。

「お父さん、帰って来たよ」マリが言う。マリのくれた菓子、ナニを食べたか覚えていないが、コーヒーで流し込んだ。

しばらくの間があった。何から話そう……。

やがて父親が現れた。オレは立ち上がり最敬礼をした。父親に掛けるように言われ座った。

ひと通りの挨拶と簡単な自己紹介を述べて、今のマリの身体状況を告げ、その非礼を詫びた。

黙って聞いていた父親の表情が変わらない。ナイスミドルとはこういうヒトをいうのだろう。若い頃は、きっと多くの女を泣かせたに違いない、そんなことを考えて父親の言葉を待った。

「で、マリと結婚を考えているということですね」

「はい、お嬢さんをいただきたく、今日あがらせていただきました」

こう言わなければ、と考えていた言葉を吐き出した。

「こういうことは、本人たちの思いに親がどうこう言っても仕方ありません。マリもいいオトナですから……あなたたちに任せます」

ありがとうございます、オレはソファーを外して床に頭を付いた。良かった、肩の荷が降りた。

早めの夕餉は、母親の手料理にマリも手伝って拵えられた。

父親とふたりで酒を酌み交わす。

仕事のこと、家族のこと、聞かれなかったことはないくらい尋ねられ、それに応じた。

好かれようとも思わなかったが、オレはマリの父親に好感を持った。年が同じなら、親しい友人になれる男だと思った。

マリの料理は、母親仕込みだと痛感した。素材を生かしたモノをシンプルに供してくる。

この家でマリは、こうして育てられたんだ、とヒシヒシと伝わった。

はい、これはね、魚屋さんが作ったものだけど、と見事な刺身の盛り合わせが染付けの大皿でテーブルに載せられた。母親は、おめでたい日になりましたね、と祝福してくれた。

刺身が実に旨かった。やっと味を楽しめるようになっている。ビールではじめて、それからは日本酒ばかりである。

席を立った父親が盃洗を持って戻ってきた。一度、料亭で使ったことがある。

儀式のように父親と盃を交わした。肩の荷がまたひとつ降りた。

何も笑わせようとはしていないが、オレの言葉に母親とマリはよく笑っていた。

チグハグなことを言っていたのかもしれない。

途中で、マリの姉夫婦もやって来た。マリのお姉さん、マリと違う雰囲気の美人だ。

父親似だろう。マリは母親の系統そのものである。

この年下の女性を、オレはこれからお姉さんと呼ぶことになる。なんとなくエロい。

翌朝は早くに目覚めた。隣にマリが背を向けて寝ている。マリの部屋に布団がふたつ並べて敷かれていた。

ああ、オレはここのヒトたちと家族になるのか……昨日、このオレを快くむかえてくれたヒトたち。そしてマリが妻となる。そう思いながら目を閉じてまた眠りについた。

マリから起こされ、朝食を取る。父親は既に出掛けていた。寝坊の詫びを母親にしたが、自分の家のように、好きにしてください、と言われた。

みんなここの品なんですよ、田舎料理で、というが、さんまの味醂干し、だし巻き卵、かまぼこ、青菜のお浸し、味噌汁はマリと同じ味だった。その全てが沁みた。起き抜けなのに、涙が出るような旨さだった。飛び切りの素材に、まごころが多く含まれている。

なにしてんの?マリに見咎められた。

「旨くて泣けてくる……」

「…そう……良かったね」

マリは口を窄めてオレを見ていた。

母親がいなくて良かった。朝メシを食べて感動してるなんて見られたくない。

その日はマリに案内され、まずこの家を周り、近所を歩き、車を使って市内を巡った。

マリの通った学校の全ても見た。その場、その場での思い出をマリはたっぷり語ってくれた。

夜はすき焼きを供された。まさに歓待とはこのことをいうのだろう。昨夜より父親とも打ち解けて話せた。

翌日、午後から夕方までマリは友達と会うという。一緒に来る?と聞かれたが、女同士の話もあるだろうし、いずれその友達とも会うことになるだろう。

マリのアルバムを持ってこさせて、暇つぶしをしていることにする。それと、近所のマッサージを聞いた。ずっと肩凝りなどなかったが、ここへ来て、まだ降りてない荷があるのか、重苦しさがある。マッサージはお母さんに聞いてみて、あたしはわかんない、とマリはそそくさと出かけてしまった。

マリの生まれた時からのアルバム、赤ちゃん、やがてこんな感じでマリも子を産むのだろう。

成長過程を追ってページを捲っていった。若い頃の母親は、女優のようだ。

小中高とマリがいないから、彼女を探すのに苦労したが、それもまた楽しかった。

3冊の卒業アルバムのほかに個人アルバムが10冊もある。マリが愛されて育てられた証だった。

ひと通り見て満足し、居間へいく。母親はソファーに座って花を活けていた。

「マリったら、置いてけぼりにして……わがままな子でごめんなさいね」

「いえ、久しぶりに友達に会うのに邪魔してもなんですから……マリのアルバムを見てました」

「おやさしいのね」

「あの、この近所にマッサージはありますか?」

「どうしたの?肩凝り?」

「ええ、……珍しく凝ってしまって」

「緊張したのね……おつかれさま」

「マッサージ屋さんね……なんなら私がして差し上げましょうか?」

「いえ…そんなお母さんにしてもらうわけにはいきません」

「あら、どうして?私はいつも主人を揉んでて、こうみえて上手なのよ、いいから遠慮せずこっちいらっしゃい」

母親は花を活け終えた花器を床の間に置いて、ソファーに座りオレを待っている。

甘えてみるか、少しだけ。ソファーに行くと横たわるように言われた。

うつ伏せになる。僧帽筋に母親の指がギュッと押し付けられた。おお、そこです、声が出る。

「ホント、だいぶ凝ってるわねぇ」

言葉通り、マリの母のマッサージはツボをついてきた。実によく揉んでくる。細い指先なのに力強く的確にコリを捉えてきた。身を任せているうち、あまりの心地良さに寝てしまった。

はっ、我に返り起き上がると、マリの母はやさしくオレを見ていた。

「どう?少しは楽になった?」

その額に汗が浮かんで、数本の髪が貼り付いている。オレは、その美しさに見蕩れてもいた。

「いや、すいません……気持ちよくて寝てしまいました」

「いいの…それだけ気持ち良かったなら、それより、私の肩だけ、ほんの少し押してくれない?お返しだと思って…」

「はい、うまくできるかどうか、わかりませんが、やらせていただきます」

ソファーに深く座るマリの母の後ろに回り、細い首の根元をそっと押した。ワンピースの肩口があいているので、肌に直接指が触れる。

ほんのり汗ばんでいる肌、うなじも艶めかしい。50はとうに越えているはずだが、ハリのあるみずみずしい肌である。

「もっと力いれていいのよ……」

「はい……」

「そう……そんな感じで……ああ、いい…いい気持ち……」

声が艶を帯びた気がする。ナニを考えてるんだオレは…色っぽい美人とはいえ、相手はマリのお母さんだぞ。般若心経。その一文字一文字を頭に浮かべる。何も見ず、何も感じない。

それを見透かされたかのように、マリの母は次の注文をしてきた。

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