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あの日のこと~「不発」の理由(1/3ページ目)

投稿:2022-06-11 12:10:47

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本文(1/3ページ目)

ピュア・シュガー◆IIhnI2U
最初の話

その日はひとりで居酒屋で飲んでいた。カウンターの端で店の喧騒を耳にしながら。やがて隣にカップルが座った。女は目を引く美形で服のセンスもいい。男の方は学生がまだ抜けきっていない感じでいささか不釣り合いな感じがした。海産がウリのこの店の貝の刺身が来ると、女が話しかけてきた。「それおいしそうで…

前回の話

女の尻で遊んでると、たまに面白いこともある。印象に残ってる女たち。以前、相席やフツーの居酒屋で、これはという女の子を見つけて、尻をやっつけていたが、その日は何処へ行ってもめぼしい女がおらず、もう帰るか、と友達と話していた。「最後、キャバで一杯だけ飲んで帰ろ」その言葉に同意して一軒の店…

女を金で買うことが苦手だった。

しかし女を落とすために使う金には糸目をつけない。

この似て非なるもの。

ヤル前に払うか、ヤル為につぎ込むか、といえばさらに混濁してくる。

戦後以降、飲む場所、買う場所と、男たちが足繁く通う場所はそれぞれ棲み分けていた。

例えば浅草で飲んで吉原へ行く。横浜の野毛で飲んでザキに行く。

それより以前は、買う場所で飲み騒いでいた。

吉原の大門のなかで全て事足りていた。遊郭で、床の敷いてある隣部屋で飲む。

時代の移り変わりと共に男達の遊び場は、その位置や形態を変化させていく。

今は、女の方から何処へでも出向いてくれるから、そのエリアも意味をなしていない。

どの街で飲んでもデリバリーで女の子が到着する。

花街へ足を運ぶ「情緒」など誰も知らない。

これまで、風俗遊びをしたことは皆無だった。

一度だけ接待の延長でソープへ行ったが、その時も純粋に風呂として身体を洗ってもらい、性的な行為を拒んだ。

それをきっかけにその夜には女のマンションにいたが、金を払ってセックスはしていない。

相手の女に魅力がなかったわけではない。ただその時に性欲が芽生えなかったこと、それに元々、金で女を買うことへの抵抗が、意地を張らせたのであろう。

夜の店でも、なかには枕をして様々な対価を得るために身体を許す女もいる。

あれは確か新宿だったが、店の中で封筒入りの札束を出して、これでやらせろ、と言っていた男がいた。周囲に知られて上手く運ぶことはまずない。浅はかな男だ。

これまで風俗を必要とせずに来れたが、今回はどうにも道を踏み外してしまった。

ひとつのプロジェクトが大きく貫徹して、社に莫大な利益をもたらした。

そのメンバー各自にも結構な額のインセンティブが支払われ、それを祝う集まりが銀座の中華料理屋で催され、二次会も銀座の店となった。

オレも銀座で飲む時は使う店であるが、六本木に足を向けていたため無沙汰である。その六本木へもほとんど出ていない。

「あら珍しいメンバーでお見えですね、何かお仕事がご成就されたとのことで、おめでとうございます」

葵という女、32になっているはずだ。銀座へ通っていた頃は、この女のマンションに何度も泊まっていた。

「そうなんです。今回はチーフのおかげで、上手くいったんです」

高木がオレを見ながら成果をひけらかす。

このテーブルにはオレと高木、葵とヘルプの女の子が座ってる。隣には他のメンバーがいた。

「なあ高木、仕事の話はやめよう。久しぶりの銀座なんだから、素敵な女性陣に楽しませてもらおう」

「わかりました、ではみんなで乾杯しましょう」

ペリエジュエが注がれているグラスを掲げる。この酒は瓶代、容器代が高いだろうといつも思う。

銀座へ足が遠のいたのは、この葵のせいである。端正な顔立ちだが、仲が深まると露骨な欲深さが見えてしまった。

モノをねだるとかではなく、もっと根の深い生き方への強欲さである。

自分の思うビジネスへの野望、そんなモノが、強く見えてしてしまい、鼻に付くようになった。

もちろん銀座の女たちは、おしなべて、人一倍の欲を持っているが、それをみんな裡に秘めている。

マリも自分の夢へ向かい、半分以上は実現させている。ふたりの違いは純粋さの種類であろうか。

葵は、手段を選ばない、そんな雰囲気がある。

剛腕のやり手だが、オレには合わない。そういえばわかりやすいだろう。

ヘルプの女の子は、高木と仲良く話を弾ませている。22~3くらいだろう。

聡明な顔立ちをして、理系のエンジニアといった雰囲気だが、華も色も備わっている。伸びるだろう。

「お仕事、お忙しいんですね、なかなかお見えにならないし……」早速、葵がつついてきた。

「機会があれば、寄ってるつもりだ。港区からは、なかなか東海道線の線路が越えられなくて銀座には来れないんだ」

「ははは、いつも線路渡っていらしてたのね…」

「ヘルプの子……変わり種だな、理ケジョって感じで」

「あら、さすが……女を見させたら右に出るモノなしね……」

都内、日本でもトップクラスの理工学部の院生だった。

「こんなとこで働いているヒマあるのか」

「こんなところで、ワタシも働いておりますが……」

「いや、理工の院生なんて研究とレポートの毎日のイメージ強いから」

「……そのへんは本人に聞いてみたら……おもしろい子よ、とにかく銀座で働いてみたかったんですって」

遊び人の高木と仲良く話しているから、世慣れてもいるのだろう。

「ねぇ、ちょっとお話があるから、今夜、時間とれないかしら……」

「ここで話せばいい、聞くよ」

「いいえ、ここでは……よければ高木さんもご一緒に」

「なんだ?新しいネズミ講でもはじめたのか」

「ははは……ホント、かなわないな、でもいいでしょ?」

「仕方ない。久しぶりに来たんだ」

葵といつも待ち合わせたバーで待っていた。

高木に話すと興味津々で同席するという。

結局、オレたちのテーブルでシャンパン5本空いたが、社に請求書が回るらしい。

「なんなんでしょね、葵さんの話しって……」

「期待するなよ……ナニ話してくるかわからない」

高木はオレの言葉に耳を傾けてはいないようだ。

人を待たせるのが嫌いだった葵が時間どおりやって来た。

シャンパンゴールドのクロコダイルのバーキンが煌めいている。

マトモな国産車1台を抱えて歩いていると同じだ。

複雑なペイズリー柄のシルクのワンピースが葵を引き立てている。

酔いが回ってるから、久しぶりの葵を女として見てしまう。

「すいません……お待たせしました、高木さんもお時間いただきありがとうございます」

葵はグラスワインをオーダーして、次のような話しをした。

ビジネスパートナーと共に立ち上げた新しい商売。

それはフランスなど海外のエスコートサービスだ。

金持ち相手に選りすぐりの美女を手配する。ようするに禁忌なしの超高級デリヘル。

その会員制のメンバーになって、一度だけでいいから女の子を呼んでほしい、そして誰か信頼できる男を紹介してくれれば助かるという。

「おまえ、完全に組織売春だぞ、それ」

「ええ……そのへんは一応、いろいろクッションを敷いて、カンタンにはわからないようにしてるの、ここだけの話、生安の人のお知恵ももらってて」

さすが葵だ。抜け目など微塵もない。あらゆるコネを使い現職警察官も巻き込んでいる。

「こういうのは、女の子より、客の男から水漏れする。その対処は?」

「少しでもトラブルが見えたら、そのヒトはダミーのデリヘルのメンバーになるの。そのために稼働してるデリヘルも2つ用意してる。それで本体の実体が常に動いて見えないようにするのよ」

なるほど、国内にも政財界御用達の秘密の会員制風俗はある。

政治家の秘書をしていた頃、六本木のマンションのワンフロア全部がそうだという禁忌なしの店へ連れて行かれた。

「殺人と怪我を負わせなければ、あとは自由」と言われたが酒飲んで帰ってきた。

それと同じで銀座ならではの人脈を活かせば、この闇ビジネスは間違いなく成功して途方ない利益を生むだろう。違法を除けばオールウィンのビジネス、女の子のケアだけが残る。

高木は、呆気にとられて話を聞いている。

「わかった、紹介はできぬかもしれないが、ご祝儀だ、一回は付き合う」

「ありがとうございます」

「あ、もちろん、そういうことならワタシもお付き合いします」高木が言う。

「高木さん、心良くありがとうございます。あ、さっき店でついたミユちゃん、彼女も呼べますから、よろしかったら……」

「え!そうなんですか……わかりました」嬉しそうにしている。

「細かいことは、のちのちにということで、わたしの話はこれだけです、高木さんお時間いただきありがとうございました」

葵は高木を帰したがっていた。言うまでもなく高木は、話し聞いたら帰っていいですか、とオレに言っていた。そしてその通り店を出ていった。

「オレも帰してくれるか?おまえの願いも聞いたし」

「……もう少し付き合って」葵がグラスワインの色を変えてオーダーした。

「ね、どう思う?このこと……」

「おまえのことだ、聞く限りは成功するだろう。なんでこんなことはじめようと思った?」

「それはね、さっきのミユみたいな若い子のため」

「ん?……」

「ああいう銀座に夢みて、高いハードル超えて、やっと店に入った子が、少しずついろんなこと憶えると、欲を出してくるの……腰掛けじゃなく、本気で銀座好きになって……」

「あたしもそうだった。で、枕の誘惑がある。お客から誘われてじゃなく、自分から身体張って客を掴もうとするの、でも客の品定めもできてないのに、それは上手くいかない。それでバンス背負わせられたり、潰れていく子もいた」

「だから、あたしこのビジネス考えたの、若い子を経済的に楽にして、しかも上客を掴めるチャンスを多く与えられるってね」

「……なるほど、そこまで考えて……。しかも銀座ならではのオンリービジネスだな」

「ええ、これがウマクいけば……やっとあたしも店を持つことができる…」

もう、なにも言うことはない。

「ねぇ……あなた、今誰かいるの?」

「ああ、いる」

「そ、……いないワケないか……」演技かも知れぬが、この表情には弱い。

「久しぶりなんだから……ウチ来て……泊まって、なんて言わないから…」

複雑なペイズリー柄のワンピース、この店で葵を見た時から女を感じていた。そのワンピースを脱いだ姿、更にその下着を取った姿も見たくなっていた。

高輪の葵のマンションを出たら、夜中の3時を回っていた。

ことを終えて葵と風呂を使い、身体を洗おうとしたら、

「ダメ、ボディソープは使わないで、シャワーだけ浴びて帰るのよ、彼女オウチにいるんでしょ」

葵が抜け目なくて救われる。

葵が、ホームページのアドレスとパスワードを送ってきた。有効期限きたら全部消えるからね、ヒマな時一回のぞいてみて、と添えてある。

マリはまだ帰っていないからiPadを開く。

立ち上げたばかりというのに、完璧に整備されている。さすがの葵の仕事ぶりだ。

女の子も20人くらいUPされている。明らかにプロのカメラマンの手によるプロモーション写真、20~30歳までの妙齢の別嬪ばかりだ。銀座の子ばかりではなさそうだ。

好みの顔とスタイルに目がとまる。品の良さの下にエロさが隠れている感じ、そそられる。

この女を抱けるなら、金で買うのも悪くない、頑なはずの固持がカンタンに揺らいでいた。

風俗業には全く似つかわしくない女。オレは自分に言い訳を繕おうとしていた。

この後の手順は聞いていない。葵に電話する。

「なあに…?どしたの」日曜の夕方、すぐ葵が出る。

「ホームページ見た」

「そ、ありがとう…」

「で、どうすればいい?」

「女の子決まったの?……ご指名は……あたしでしょ?ははは」

「おまえは載ってなかったが…」

「真に受けないで……昔からたまに、ボケるよね……で誰?」

女の名を伝えると、その子選ぶと思った、と言われた。

それにあたしがこうやって電話オーダー受けるのは特別だからね、

本来はあのページで全部完結するんだから、と怒られる。

「ああいうの見るの慣れてない」

「うん…わかってる……あの子にあなたのこと、よく伝えておくから、カスタマーインフォとして」

日程を伝えて、金はどうすればいいと聞くと、詳細についてはホームページをご覧ください、と言われた。

「あのさ、終わってから、感想聞かせて……ね」葵の言葉で電話を終えた。

翌週の平日の旗日に都心部のど真ん中のホテルをリザーブした。

ビジネス街にある方が知り合いに会う確率も低い。なにかと都合がいいだろう。

葵とその選んだ女の関係を思えば、葵に恥をかかせぬようホテルは奮発しておいた方がいい、と言い訳を自分に課して、金で買った女をもてなす気でいた。

その日は朝からあいにくの雨だった。タクシーで行こうと思っていたが、かなり大降りである。仕方なく地下からレバァンテを出した。

マリは日が変わるころまで帰ってこないスケジュールの日だ。オレの方が早く帰れるだろう。

なんだろう……金で買う女に会いに行くというのに、浮き足立っている。

江戸のいにしえ、吉原へ向かう男もきっとこんな心持ちだったろう。

雨はやむことを知らずにいるが、ホテルへ着き、宿泊の旨を伝える。

泊まりはしないが、部屋を予約していますというのもおかしい。スタッフが車を預かってくれた。

チェックインして、あとから連れが来ること伝える。セキュリティのしっかりしたところではそうした方がいい。

ベルボーイに伴われ、部屋に向かうがホテルというよりミュージアムといった趣だ。とにかく天井が高く開放感に満ちていた。

奮発した部屋は、オレの部屋より広く、都心にいる気がしない。箱根あたりの和風モダンな高級宿にいるようだ。落ち着くが数時間後にはチェックアウトしなければならない。

またコスパの悪いことをしていた。

車で来ているから酒も飲めない。仕方なくコーヒーとデザートでもオーダーしておく。女の子も喜ぶだろう。

時間通りに彼女が現れた。ホームページの画像に偽りは全くない。玲子と名乗った。170近いだろうか、ヒールのせいでそれよりも高く見える。なにをしているのか正体を探れぬ美しさだ。金で自分を売っている女には到底見えない。カジュアルな水色のスーツが似合っていた。

「すごいお部屋ですね~」

「ああ、オレもついさっき着いて自分がどこにいるのか、わからなくなった」

「ホント静かで、どこかの旅館にいるみたい……」

「雨まだ降ってた?」

「ええ、まだ降ってますね、フライトがあって昼過ぎに東京に着いたんですが、福岡は気持ちいい青空でした」

「ん?CAさんなの」

「はい、ホントはお教えしてはいけないんですが、オーナーからいろいろお話しをお伺いしておりますし、わたし……嘘はつけなくて……」

「そうか……なるほどね」

玄関の呼び出しコールが鳴り、注文したものが届けられた。大きなダイニングテーブル、ふたりでは使いきれない。

「うわぁ。可愛い!ちょうどお腹すいてたんです。いただきます」

「お腹すいてるなら食事を頼もうか?」

「いいえ、今食べたら、今度夜に響きますから。今朝5時ころ朝ご飯を食べて、あとは何かちょっとつまんでた、というくらいだったので」

「わたしたちって、仕事の時は時間で食事なんてほとんど取れないんですよ」

「そうだろうな、サービス業は」

話す前はクールな印象だったが、こうして口を開くと、フランクで人懐っこい。

「わたしも、この前まで銀座にいたんです……」

「葵のとこ?」

「ええ、でもいろいろあって……夜はやめました。で、やめる時に葵さんから話しをされて、こうしてお手伝いしてます」

「なるほどね、抵抗はなかった?」

「……全くなかった、と言えば嘘になりますね」

「あの店では会ったことないね」

「お席についたことはありませんが、お見掛けはしております。私もスケジュールの合った時しか店には出ておりませんでしたが……」

玲子は金沢の生まれだという。美人の多い街、3度ほど行ったが、食べ物も美味しい。

「どうする?お風呂行く?」

「葵さん…オーナーから風呂に入らずに行って、と言われておりますので、シャワーも浴びてきてませんが、入った方がいいですか?」

思わず、笑ってしまった。玲子は怪訝な顔をした。

「あ、そうか、それなら風呂は後にしよう」

葵が最大限のカスタマーインフォを伝達してくれていた。

オレは葵の部屋に行っても、入浴前の仕事終わりのままの彼女を愛していた。

女の身体の匂い、一日を生きた証、せっかくの尻の匂いも風呂に入れば消えてしまう。

葵もはじめはイヤがったが、そのうち自分の匂いでオレが興奮していることを喜ぶようになった。それは葵だけではない。マリもそうだが、関係を重ねた女には強いてきた。

葵はオレが喜ぶよう、それを玲子に指示していた。ま、これもホスピタリティ、サービスの一環だろう。

「じゃ……」

玲子が立ち上がり、部屋を少し見ていいですか、という。どうぞ。

風呂に入るな、という葵の指示を玲子はどう受け取っただろう……思わず笑いが込み上げる。

「こちらへいらしてください」ベッドルームから呼びかけられた。

部屋に入ると、玲子はスーツと同じ水色の下着姿になっていた。

大きくウェーブした髪が豊満な胸を支えているレースのブラジャーに掛かっている。

黒のストッキングは水色のガーターベルトで留められている。

身長があるため、見事な肢体が伸びて、黒のハイヒールへと繋がっている。

なんと見事な光景だ!言葉を失い見惚れてしまう。

「……あんまり、見ないでください……恥ずかしい」

「玲子ちゃん……キレーだ」

「……ありがとうございます……すごい眺めですね、雨でも、またそれが素敵……」

玲子が窓際に歩み寄る。ソングのレースのTバック、大き目の尻に食い込ませて歩調に合わせて尻が揺れる。たまらない。オレは今からこの尻を味わえる、そう思うだけで、勃起が待ちきれないと、顔を上げてきた。

玲子の背後に身体を寄せた。

「たしかに…雨の景色もいいもんだね…」

遠いビル群は、そのシルエットをぼんやりとさせていて、雨が全て白く煙らせていた。

背中を抱き後ろから玲子の胸に手を回す。振り返る玲子の唇を合わせた。

ついさっき会ったばかりのいい女、それがもう手中にある違和感の幸せ。女を買うことは悪くないな。

玲子を後ろから抱いたまま、少しずつ前に足を進め、窓際まで追いやる。

「窓に手をついて、そのままにしてて……」

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