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【高評価】オトナのオンナにして・・・と小学生にお願いされています。さて、どこまで教えれば・・・悩みます。(1/6ページ目)
投稿:2022-04-03 08:20:54
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これは私ことマドカ少年が中学2年の時の体験です。女系家族で育った私は、オンナだらけの中で育った環境からか、女性に対しての憧れや異性としての意識などは無縁でした。しかし、小学6年の時に高校生だった従姉妹に童貞を捧げて以来その従姉妹を意識しやがて初恋をすることとなります。しかし、…
「うん。僕の奥さんも君の彼女と同じこと言ったんだ・・・・。もうすぐ逢えるって。」「そっ・・・・ソレって?」シリーズ第33話目を迎えましたこの物語は、教育実習先で担当となっている土木科3年生の担任である佐藤先生から思いもしないことを告げられたところから始まります。時代は平成2年…
私が受けていた高校の教育実習では、実習生がそれぞれ何らかの部活を担当するのが決まりとなっていました。
その実習生の一人である私自身、高校時代は盗難被害に遭いあちこち部品が欠品するCBX400というバイクを復元することに相当な時間専念していました。それで私にとってその部活というのは全く縁のない世界・・・。
第34話となる今回のストーリーは、そんな私が自分には全く縁のない吹奏楽部という部活を担当し、どう言うわけか総勢80名の部員を前にして指揮棒を持って立ちすくむところから始まります。
もちろん指揮棒を持つなんて全く初めて・・・。
時代は平成2年の夏前。未だバブルに浮かれる日本という国の北東北にある小さな臨港都市が舞台となります。そして、この時大学4年生だった私が大学の附属高校で教育実習を受けていた時のストーリーです。
その2週間に渡る実習期間を折り返したところで、工業化学科1年の空き教室を借りて私の彼女の早坂家と私の風谷(かざがい)家の間で結納が執り行われていました。
私の母親が私の地元の東北南部から、また真琴の母親が北海道からやって来て行われたソレは、真琴の姉である晶の入院が事の発端・・・。
そして両家が顔を合わせる機会は滅多にないということで、先程結納を済ませたばかりです。
その瞬間、カレシ・カノジョだったバスガイトの真琴と私の関係は婚約者同士ということになり、いずれ結婚するという関係に・・・
それで先ほど学校から吹奏楽部の外部講師としての辞令を受けた真琴から、私が教育実習初日に吹奏楽部の顧問である小林先生から課されていた課題を改めて告げられ指揮台に登壇した次第です。
それは「暴れん坊将軍一曲の演奏を実習生の風谷先生(私のこと)の指揮で行う」というもの・・・。
その時指揮台の上で固まる私のそばで舞衣さんこと小林先生が部員一堂に告げました。
「これは風谷先生の課題であるけど、指揮者の表現をそのまま汲み取って演奏しなければならないというあなた達の課題でもある」と・・・
ということは私の指揮次第で暴れん坊にでも落ちぶれ将軍様にもなってしまうということです。
教育実習初日に「伝えたいことは言葉にしないと分からない。」と、一緒に教育実習を受けている下宿の娘で元カノのふたばと議論していましたが・・・
ここではその言葉というものを「指揮」というもので表現しなければなならないようでした。
譜面の読み方については真琴から、また指揮そのものについては以前部長の遠藤さんからレクチャーを受けていて、4拍子の曲であればさほど難しい印象ではありませんでしたが・・・
でも前に渡されていた譜面を見ると、曲の間奏部分にTP1と記された部分以外何も記されていない部分がありました。これってトランペット1・・・つまりトランペットのパートリーダーである部長のソロ演奏という部分になります。しかも、音符が5線符の上を飛び越しているようなかなりのハイトーンも含まれていました。
そんな私の想像できない暴れん坊でしたが・・・私の指揮でどこまでそれを表現できるのか凄く不安です。
そんな私が目の前に座っている80名の部員を見回すとその160もの瞳に加えて、その左右で三脚の上にセットされた大きなカメラ2台も私にレンズを向け、その始まりをじっと待っているようでした。
今この吹奏楽部は、その活動内容の長期取材を受け始めたばかりです。それは今年だけに留まらず、来年まで続くと聞かされていました。そしてそのエンディングは全国大会での演奏を撮影し、それをドキュメントとして放映するという筋書きです。
そんな中私がサッと腕を上げた瞬間、後方の左側のトランペット8名とその右側のトロンボーンを持った5名の生徒が楽器を構えました。そしてそれに釣られるように右側のカメラの向きがクルッと変わります。でも、もう一台のカメラが私を捉えたまま微動だりしません。
今、私はなんか場違いな事をしてるような・・・そんな気分になっています。
私の目の前に広げられているスコアという全パートの譜面を凝縮したそれは学校独自のアレンジが加えられ、トランペットとトロンボーンによるファンファーレから始まりその後クラリネットとサックスに引き継がれるというものでした。
私はまず最初に生徒の後方で楽器を構える二つのパートに合図を送るようにして指揮棒を振り下した瞬間始まった私の暴れん坊・・・。
でも、テンポを維持しながら・・・スコアを目で追いながらページをめくって・・・旋律担当のパートに合図を送りながらのその指揮は思った以上に重労働でした。
しかも右手に持つ数十グラムしか無い指揮棒が次第に重く、しかも何も持っていない左腕も重くなってきて腕の感覚なくなりそうです。そしてそのページをめくる度に指揮のテンポも変わってしまっているのも感じています。
その時必死に腕が下がらないように頑張りながら、いつもこんな思いをして指導している舞衣さんと先程まで指導していた真琴をリスペクトしていました。
やはり私の指揮が分かりにくいのか、演奏中あちこちの生徒が首を傾げながら演奏しています。しかも、パート全員で入るはずの小節の頭も揃っていません。
「これでは演奏する方もたまったもんじゃないな・・・」
なんて自覚しながらきちんと腕を振ろうとするんですが、ソレも次第に・・・腕の感覚が無くなっていきました。
そんな中曲の中間部にある間奏部分に差し掛かると、私が見下ろす部員たちの左後ろに座っていた部長がスッと立ち上がります。
私が目で合図しながら指揮を始めるとそのソロパートが始まりました。
「あっ・・・・カッコイイ・・・」
それが私の印象でした。
いつもの部長からは想像できないその精悍さ・・・。
それにどことなく漂うその清楚な雰囲気・・・。
私の方に真っ直ぐに向けられたベル(ラッパの先端部)から直接聞こえるその音は何の混じりっけのない、まるで欲望や汚れなんて関係のない音として私の耳につき刺さります。もう・・・全身鳥肌です。
吹奏楽経験者なら誰しもその澄んだハイトーンの音色に聴き入ってしまう・・・そんな音色が、決して音響環境が整っているとはいえないこの多目的ホールに響き渡っています。
この時私は、私の指揮でこれほど凄い演奏をするこの部長が真琴の指揮ではどんな演奏になるのかを想像していました。
そしてそんな思いに鳥肌を感じながら、先ほどコレと比べられない難しいコンクール課題曲を指揮しながらその音色を聴いてパートや個人の課題を見つけ、それを忘れず最後まで指揮をしていた真琴が同じ人間と思えない感覚に・・・
そしてそんな中、やっとのことで私の人生初暴れん坊将軍が終わりました。恐らく明日の授業では筋肉痛の中、黒板に向かう私の腕が上がらなくなることはその時容易に想像できます。
その時、私の脇でそんな私を一瞬見た舞衣さんが楽器を持った生徒達に目をやりました。
「では、部長。今の暴れん坊・・・どうですか?」
舞衣さんが先程トランペットソロを披露してくれた遠藤部長にそう尋ねました。
「はい。なんか・・・落ちぶれ将軍様が農耕馬に乗って畦道を迷いながら必死に走っている印象です。」
この部長は遠藤美月さんと言う普通科3年の生徒で、ど素人の私に指揮というものを教えてくれたその人です。そんな彼女からはチャキチャキっとした中からどことなく色っぽい何かを感じる場面もあった事を思い出しました。
そんな私のどうでもいいことなんて関係ない舞衣さんは生徒に質問を続けています。
「では、クラ(クラリネット)の天間林さん・・・」
「暴れん坊将軍って白馬に跨って富士山をバックに白浜を走るイメージですが・・・なんか・・・黒馬に跨って雑草の生えた荒地を目標もなく走ったり歩いたりしている感じでした。」
「では、風谷先生・・・・。風谷先生はどんなイメージで指揮をしましたか?」
その時、舞衣さんが生徒に質問をしていたそんなやりとりを聞きながら・・・
「指揮ってモノは、曲の中のストーリーを演奏者に伝える・・・それが指揮ってモノなのか?」
なんて当たり前のことを考えていたときに急に質問されてしまった私は、ドギマギしてしまって答えになるようなことが言えませんでした。そんな時舞衣さんはまるで私が答えられなかったことをまるで代弁するかのように話し始めます。
「うん・・・そうね。わたし的にはやっと走り切った・・・って感じね。でも・・・本当に走るのが精一杯って感じ。暴れん坊と言うよりは戦に敗れて項垂れながら、まるで迷い犬のように帰り道も分からず言うことを聞かない農耕馬をやっとのことで走らせている感じだったわ・・・」
すると今ほど質問を返したクラリネットの生徒が舞衣さんに質問をしました。
「この曲ってどうしてもテレビのオープニングのイメージがあるんですが・・・白馬に跨った将軍様・・・」
「うん・・・そうだよね。そもそもこの曲ってそのオープニング曲だもんね。でも、暴れん坊将軍のオープニングって白馬と白浜のイメージっがあるんだけど、初期の暴れん坊って黒馬に乗っていたの。しかも川の中を走って・・・」
「えっ?そうなんですか?」
「そうなの。でも、浅瀬の川の中を下流から上流に向かって・・・まさに時代に立ち向かうって感じでその馬を走らせていたんだけど・・・。今の風谷先生の暴れん坊からは少なくても弱きを救い悪事を退治するっていう将軍様は感じられなかった。」
「すいません・・・。スコア追いながら指揮するだけで精一杯になっちゃって・・・」
「うん・・・仕方ないよね。何せ初体験なんだから・・・うまく行かなくて当たり前・・・。」
「すいません・・・精進します。」
「じゃっ・・・トランペットの吉川さん。この春に初めてトランペットを吹いた全くの初心者から見て、今の部長のソロはどうでした?」
するとトランペット8名の一番右に座っていたちょっと浅黒く体育会系っぽい女の子が立ち上がりました。
「はい・・・。今の指揮に合わせると、こうなっちゃうんだ・・・って思いました。普通どおり吹けばもっとかっこいいのに・・・。」
「はい。これが風谷先生の指揮って事です。吉川さんありがとう・・・わたしの言いたいこと言ってくれて・・・」
「そうですよね・・・曲をイメージすらしないで指揮するとこうなっちゃうって事ですよね・・・」
舞衣さんはそんな私の言い訳が言い終わる前に息を吸って大きな声で次のように生徒達に伝えました。
「それじゃ今度は早坂先生の指揮にあわせもう一度・・・。今の3年生は早坂先生の本気の指揮を知ってるけど、今の1年2年はマコトマジックの本気の指揮は初めてだと思うからびっくりしないで合わせてみて。それじゃ、早坂先生・・・本気の暴れん坊をお願いします。」
そしてその舞衣さんに応えるように今度は指揮する真琴に合わせて同じ曲が始まりました。
それは私の暴れん坊とは全く違ったストーリー性のある暴れん坊です。茶髪の癖っ毛を振り乱すようにその小さな身体の全身を使って、まるでプロの指揮者がオーケストラを指揮するかのような躍動感のある動きをしています。
その・・・たかが暴れん坊将軍にコレほど真剣に向き合うなんて・・・。
そしてそんな曲のメリハリを演奏者に伝えながら指揮して奏でられたソレは、オーブニングで白馬に跨った将軍様がその馬を走らせる道中、悪事をやらかした悪人を切っては捨て切っては捨て・・・という活躍の後、世直しをしたと言う清々しいエンディングで閉じるというまさに理想の将軍様でした。
しかもさっきのトランペットのソロとは一味違う力強くそして艶のあるその音色を聞いた私はもう逝っちゃいそうです。吹奏楽なんて全く縁のなかった私が聴いてもそんな感じでした。
その後、壇上の真琴が私にとっては完璧に思えたそんな演奏に対して各パート毎にいろんなアドバイスをして意見のやりとりをしていました。
この曲というのも春の新入生歓迎会から定期演奏会に至るこの附属高校吹奏楽部の名物的な曲・・・。
そんなこともあり真琴は改善点をブラッシュアップすためにいろんな意見を引き出しているように見えます。それはいつしかどうやればもっと躍動感を出すことが出来るかというディスカッションに・・・。
そんな最中、私の傍に来た舞衣さんが私の肩を叩いて呟きました。
「これこそがマコトマジックの真骨頂・・・。決してこちらの意見を押し付けない。答えは演奏する側にある・・・って思ってるのね。そしてこんなやりとりの中でみんな成長していく・・・」
「そうですよね・・・。マコちゃんって自分の意見を押し付けるなんてことはありませんからね・・・・。」
「ねえ・・・知ってる?高校の部活の中で、大会に一緒に部活の顧問も出場するが吹奏楽なの。指揮ひとつでこうも音楽が違ってくる・・・。これって凄いことだと思わない?私が高校生の時途中で辞めちゃった吹奏楽に、今指揮者としてこうやって携われるんだよ。」
「それって大会の成績にも影響があるからプレッシャーですよね?」
「うん・・・。でも、この歳になっても高校生と一緒に大会に出れるなんていいと思わない?しかも、高校生ってどう頑張っても3回しか出られない大会に顧問やってる限り何度でも出られるんだから・・・。」
「そうですよね。舞衣さんがそうやって伝統を引き継いで行くんですね・・・」
「伝統?そうね・・・上手いこと言うわね。でも、マコトマジックの頃からは事情が違ったの。」
この「マコトマジック」というのは、真琴が吹奏楽部に在籍した2年間で吹奏楽部のレベルを一気に引き上げ、ソレによりいつの間にか県内有数の吹奏楽強豪校にしてしまったという伝説的なことをひっくるめて、いつしかソレのことをそいう呼んでいました。
この時、そのマコトマジックの頃から事情が違った・・・と、肩を落としながら話すそんな舞衣さんに当然聞いてみました。
「どう違ったんですか?」
「それまではどちらかと言うと、指揮はオマケみたいなもの・・・わたしはそれまでソレでいいと思っていたの。」
「オマケ・・・って・・・?」
「わたしがこの学校で先生になって、昔挫折しちゃった吹奏楽ってものに携われるようになってすごく嬉しかったの。でも、わたしは顧問だから演奏することはできない・・・だからその指揮ってモノで一緒に演奏したかったんだけど、所詮指揮ってオマケなんだな・・・・って思っていたの。」
「でも、舞衣さんも吹奏楽の経験が・・・」
「うん。わたしの高校でも顧問が指揮してたんだけど・・・今考えると意志の疎通が全く出来ていなかったの。演奏する情報は譜面に全て書いてあるし・・・作曲家がそう記したんだからソレでいいって思ってたのね。」
「それじゃ、指揮者の意思は・・・?」
「うん。全く考えてなかった・・・。だからオマケ。」
「でも、舞衣さんは今・・・今までオマケにしか思わなかったその指揮ってモノで自分のイメージを伝えようとしている・・・。」
「うん。それがマコトマジック・・・。早坂さんが部員の意識改革をしちゃったのね。個人の演奏レベルを上げるだけでなく、それによって譜面の情報以外にも情報をくれ・・・ってことになっちゃって。」
「そこまで変えちゃったんですか?」
「うん・・・。これって凄腕の先生が何年かけても出来ないこと。だからそれがマコトマジック。」
「でも、そこまで部活を変えちゃうと上級生なんかから色々あったんじゃないんですか?」
「うん・・・。そうみたいなの。早坂さん自体学費免除の、しかも吹奏楽部初の特待生として入学してるから彼女なりの責任を感じていたみたいなのよね。」
「やっぱりそうですよね。何せ部活で初めての特待生ってことでいろんな期待も背負ってるし、その分反発も大きいだろうし・・」
「でも、早坂さんのいいところっていつも前向きなところなの。上級生や楽器経験者の1年生までソッポを向いちゃった時、まず最初に早坂さんがやった事って初心者の指導だったの。」
「それって、外堀を埋める・・・ことですよね。」
「それが違うの。早坂さんが今の自分にできることを考えた末のことらしいの。」
「その時って、吹奏楽部の特待生はマコちゃんだけで経験者はあまりいなかったんじゃ?」
「うん・・・。そうなの。今じゃ半分以上が経験者なんだけど、その時ってそのほとんどが全くの初心者で・・・」
「それじゃ、譜面の読み方も知らない?」
「うん。そこから・・・なの。あと、一部経験者として入部した1年生もキチンと譜面を読める子がなかなかいなくって・・・」
「各パート内で教えるとかできないんですか?」
「それが、春に初心者に手取り足取り教えている間にあっという間に野球応援が入って来て、次に吹奏楽コンクールの支部大会があって・・・上級生は自分たちのことだけで手一杯なのね。」
「それで・・・初心者を指導する人がいれば負担が減る・・・と。」
「うん・・そうなの。その初心者を指導することだけは自由にやらせてもらえたみたいでなんだけど・・・」
「なんか引っかかる言い方しますね。それでなんかあったんですか?」
「それが・・・野球応援の時、その試合が長引いちゃってトランペットが口が痛くてもう吹けませんって・・・ってなって。」
「それでどうしたんですか?代役なんてその初心者しかいないんじゃ・・・」
「それで音程なんてどうでもいいから吹けるなら吹いてみろ・・ってことになって。しかも全く練習もしてないその初心者に・・・」
「それでどうなったんですか?」
「そしたら譜面も見ないでキチンと吹いちゃって・・・」
「どうして吹けたんですか?」
「それまで基礎練習をみっちりやってきた成果だって。その間、上級生たちが応援マーチの練習してたのを耳で聞いていたのね・・・それで。」
「すごいじゃないですか・・・それじゃ上級生たちは驚いたでしょう」
「そしたら始まっちゃったの。」
「何がですか?」
「下剋上・・・」
「えっ?何が・・・どう下剋上なんですか?」
「上級生より上手な初心者が現れ始めたってこと。」
「そうしたら部活内・・・大騒ぎじゃないですか。」
「もちろん。ちょっとの差だったら分かんないけど、上級生より初心者の方が音も綺麗だし安定してるし、何より譜面の読み方ができるから初見である程度吹けるというか・・・」
「そうしたらマコちゃんの立場がますます・・・」
「それが違ったの。上級生や経験が長かった子ほどそのプライドが許さなかったのね。その野球が準決勝で敗れてからの練習の入れ込み方が違うというか・・・目に色が本気になったというか・・・」
「みんなを焚き付けちゃったんですね。」
「うん。そうしたらあれよあれよという間にコンクールの支部大会を突破して県大会で金賞取ることになっちゃって・・・。その時他校の先生からどんな指導してるのか?・・って聞かれて困っちゃって・・・」
「それって、他校の先生にも認められたって事ですよね。」
「うん。すごく音が澄んでいたんだって。私自身もそうとは思っていたんだけど、毎日その音を聞いてるとその変化自体はあまり分からなくって・・・。」
「前の演奏しか聞いてない他校の先生とか審査員はさぞ驚いたでしょうね。」
「そうね。そのコンクールの審査員からはすぐにでも東北大会に推薦できるレベルにはなっていたけど、東北大会常連高との差がハッキリしてから文句なしの状態で送り出したい・・・ってコメントもらったの。」
「県大会で金賞なのに東北大会には行けない・・・?それって、俗に言うダメ金ってやつですか?」
「うん。そのとおり・・・」
「でも、その時県内の強豪校に肩を並べたって事ですよね。」
「うん・・・そうね。でもその頃から感じていたの・・・私の指揮力の無さを。このままじゃいつか頭打ちになるんじゃないかって・・・」
「そこまで来ちゃっていたんですね。
それで次の年も下克上があって・・・」
「次の年は何があったんですか?」
「さっきのトランペットソロ聴いてどうだった?」
「はい・・・全身鳥肌でした。」
「今、あなたを全身鳥肌にしたその部長もはじめは全くの初心者だったの。」
「えっ?・・・そんな感じには見えませんが・・・」
「まっ・・・素質があったのね。早坂さんの教え方も良かったんだけど・・・彼女、トランペットを吹くために生まれて来たと言っても過言じゃない変態的素質の持ち主なの・・・・・。」
「そんな・・・変態だなんて・・・」
「トランペットって吹く人によって音色が違うのって知ってた?」
「あっ・・・そういえば・・・」
「そうなの。あの部長の唇って・・・まさにトランペットのマウスピースにジャストフィットなの。しかも、男子顔負けの肺活量に唇の柔らかさも丁度良くって・・・あの澄んだ音色って訳。」
「そうなんですね・・・。そういえばマコちゃんも・・・。」
「そうなんだよね・・・実は早坂さんって、金管楽器ならなんでも出来るの。でも・・・トロンボーンとユーフォ(ユーフォニアムのこと)のマウスピースが唇にあってて・・・それであの音色って訳・・・」
「部長って凄い人材じゃないですか・・・探してもなかなかいない・・・」
「そうなの。早坂さんが開花させたようなもんなの・・・。わたしも高校の時トランペット吹いていたから分かるけど、アレは努力とかそういうものでは補えない・・・生まれもってのもの。」
そこまで話した舞衣さんが、丁度真琴の話が終わったのを見計らってその部長に声をかけました。
「部長・・・チョットお願いがあるの・・・。」
「なんでしょうか?」
「風谷先生がさっきのソロ聴いて逝っちゃいそうだったんだって・・・。オトコの人を寸止めにするのは気の毒だから・・・アレで逝かせてあげて・・・」
「あっ、アレ・・・ですね。」
そう言うと部長はトランペットに息を吹き込み唾抜きからフッと唾を抜くと立ち上がって再びそのシルバーに輝くトランペットのベルを私に向けました。
そしてそこから吐き出された曲は・・・・必殺仕事人・・・
それを聴いた私は逝ってしまいました・・・・というか仕事人に殺されてしまった感覚です。
まさに悩殺・・・。こんなに澄んだ真っ直ぐなそんな音色・・・こんなの聴かせられたら・・・・。
「あの子のカレシになるオトコって幸せモンだと思うよ・・・何せあの唇・・・そしてあのキレのある舌・・・」
この時舞衣さんが何を言わんとしているのかなんとなく分かりました。そしてその言葉に私自身背筋がゾクッとしています。
そんなことは置いといて舞衣さんの話は続きます。
「トランペットって、聴いた人の脳裏に焼き付くみたいなの。その演奏自体を印象付ける重要な役割を担ってる・・・。」
「そうですよね。仮にそのトランペットがグダグダだったりしたら、他がどんなに良くっても・・・やっぱりグダグダ・・・。」
「そうよね。そのトランペットで勝たせてもらってるようなものだから・・・」
「そんな部長を発掘した本人があのマコちゃんですよね・・・」
「発掘というよりは育てた・・・ってところだよね。」
「そうですよね・・・」
「その部長がトランペット吹くようになってから2年連続で東北大会推薦してもらったんだけど・・・今度はそこでダメ金取ってるの。だから今はその上を目指してる。」
「ちょっと待ってください!。2年連続ってことは去年も東北大会に行ってるってことですよね?去年ってマコちゃんがいなかった年ですよね?」
「うん・・・。」
「それじゃ去年は舞衣さんの指導だけで東北大会に行ってる。それって舞衣さんの指導マコちゃんに負けてないってことじゃないですか?。」
「でも、それがわたしの限界。いくら早坂さんのやって来たことを引き継いでもそれ以上の結果は出せない・・・。しかも、その頼みの綱のトランペット奏者も今年限りで卒業しちゃう・・・」
「それが高校部活の宿命・・・」
「それからわたし自身が焦り始めちゃって・・・。そんな時あなたが早坂さんを連れて来てくれたの。本当に有り難かった・・・ありがとう・・・まーくん。」
「ちょっと・・・やめてください。」
「香織おばさん(私の母さんのこと)から聞いてるよ・・・親類はみんなそう呼んでるって。」
「じゃ、僕も呼んじゃいますよ・・・舞衣姉さんって。」
「うん・・・それもいいかも・・・」
私と舞衣さんは、私の姉さんと舞衣さんの弟さんとの結婚で義理の兄妹になることが決まっていました。ものすごい偶然です。
「でも・・・僕がマコちゃんを連れて来たって言うのは全くの偶然なんです。僕って本当は地元の母校で実習受ける予定だったんですが・・・・」
「うん。それ・・・知ってる。受け入れ拒否にあったんでしょ?」
「はい・・・そのとおりです。」
「偶然でもなんでもいい・・・わたしはこの部活の子たちをもっと高みに連れて行きたいと思ってる。」
「全国・・・ですね。」
「うん・・・。」
「それにはマコちゃんだけじゃなくって舞衣さんの指導も不可欠ってことですよね。」
「そうじゃないの。それって部員たち自身の意識も大切ってこと。」
「意識・・・ですか?」
「当時早坂さんが初心者の指導に取り組んだ結果初めて県大会で金賞取ることができた訳なんだけど、それからはみんな練習すればうまくなって結果が付いてくるって肌で感じ取ったのね。それからはやらされてる感が全くなくなって・・・」
「意識改革ってところでしょうか?」
「そうだと思う・・・。もうそれから早坂さんはコンダクターとしての地位を確立して・・・」
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(2020年05月28日)
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