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【高評価】貧困大学生の隣に新卒弁護士の美女が引っ越してきた⑥

投稿:2024-12-12 00:49:15

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佐伯そら◆ORNFQBg
最初の話

街灯が等間隔に道を照らしている。俺は家の前まで来た。マンションの自動ドアを入って、エントランスでモニタ下のボタンで暗証番号を押すと、カチカチという音だけがこの空間にこだまし、ドアが独り手に開く。大学に通って三年間登り降りを繰り返してきた階段を悠々と登っていく。登り切った頃には、遠くに都心のビル群…

前回の話

私は、硬い床の冷たさと金槌で殴られたまではいかない鈍い頭痛、喉の渇きから、目を覚ました。ふらふらと立ち上がり、コップ一杯の水を飲んだ。少しずつ昨日の記憶が戻ってくる。確か、最後は大崎さんが送ってくれたはずである。不確かではあるが、マンションの階段を登って、自宅の玄関で「また明日」と一声か…

再び、土曜日がやってきた。

俺は彼女と話がしたくて、長い一週間、この日を待ち侘びていた。

玄関外に彼女がゴミ袋を片手に外に出るのが見えた。俺もすかさず、ゴミ袋を持って、ドアを開けた。

「おはようございます!」

「おはよう」

俺が声をかけると、紗奈も挨拶をする。

「今週も会ったね」

紗奈は、また軽快に言葉をかけてくれた。

今日も白いTシャツ、黒い短パンである。

今日は、白っぽいブラがうっすら透けて見える。

「あのー、この前会った時話してたコーヒー。この後、お渡ししていいですか?」

「えっ?ほんと?うれしいー」

紗奈は笑顔で返す。少し間が空いて、俺は話を切り出した。

「そういえば、三沢さんって、何で一人暮らししてるんですか?」

「え?一人暮らし、楽しそうじゃない?親ってありがたいんだけど、なんか自由になりたくって。仁科くんはそんなことない?」

「俺も昔はそう思ってたけど。今はそうじゃないかもですね。一人で全部負担するのって結構、大変だなーって思ったりもしてて、、」

俺はこの質問に本音で答えづらかったので、適当にはぐらかした。

「バイトって結構やってるの?」

今度は、紗奈が聞いてきた。

「今、えっと、あれ?いくつだっけ?」

「え?そんなやってるの?いくつ?」

俺が即答できないでいると、笑っている。

「全部で、四つですね」

「そんなに?因みに、何やってるの?」

「カフェと運送屋、家庭教師、イベントスタッフですね」

「それで、何が本業なの?」

紗奈が笑いながら、聞いてくる。

「カフェですかね」

俺が真面目に答える。

家庭教師は水曜と木曜の夕方、運送屋は月四回程度、イベントスタッフは月一回で、その穴を埋めるようにカフェのバイトを入れている。

「いや、君、本業は学生でしょ?」

紗奈は笑って、ツッコんできた。

「あ、そうか。あ、はははwww」

二人で笑い合った。俺はこのやりとりになんかホッとしていた。

ゴミ捨て場にゴミ袋を捨てて、階段をまた二人で登った。

「三沢さんの実家って、都内のどの辺ですか?」

俺はそれとなく気になっていたことを聞いてみる。

「そうねー、東京タワーの近く」

あっさりと返してきた。

「めちゃくちゃ、都心じゃないですか!、、ていうか、こんな所に住まなくても、そっちの方が便利じゃないです?」

俺は思わず声が大きくなってしまった。確か、あの辺はセレブしか住めない街って聞いたことがある。

「まあ、そうかもね。でも、工場の夜景見えないじゃない?」

「まー、そうだけど、、、」

そう言われると、俺も言い返せない。

やがて、二人は五階まで登ってきた。

「コーヒー。今、渡してもいいです?ちょっと待っててください」

「うん」

俺は部屋のテーブルに置いていたコーヒー豆の袋を紙袋に入れて、ドアの前で待つ紗奈に渡した。

「ありがとう!」

紗奈は紙袋の中のコーヒー豆が入った袋を見つめて、若干困った顔して口を開いた。

「うちに、コーヒーミルないんだよねー、、」

紗奈は苦笑い。

「あー、ごめんなさい。粉の方がよかったですね。てっきり、豆のままだと思ってました」と、俺は慌ててそれを回収しようとした。

「今って時間ある?」

とっさに、紗奈は手を上げて、俺を制止する。

「大丈夫ですけど」

俺も紗奈の視線に応えるように返した。

「仁科くんちにはあるよね?コーヒーミル。今から飲まない?」

俺は一瞬ドキッとした。

「わかりました、いいですよ。ちょっと待っててください。部屋片付けてくるんで」

俺は予想外の展開に戸惑いつつ、内心はワクワクしていた。俺は床やテーブルに置いたままのビン、缶の他、如何わしい物をクローゼットに押し込んで、何とか取り繕った。

俺は玄関のドアを開け、紗奈を迎え入れた。

紗奈は同じ間取りながら、自宅と違う部屋の雰囲気をキョロキョロと見回していた。玄関か

ら風呂や脱衣所、トイレがある短い廊下を通り、キッチンダイニングのワンフロアに入る。

「意外と物少ないんだね」

紗奈はそう言いながら、部屋に飾ってる絵を眺めている。

「これってゴッホだよね?好きなの?」

俺がキッチンでコーヒーミルを用意していると、紗奈は聞いてきた。

「ゴッホって、今でこそ有名ですけど。いつ評価されたか知ってます?」

「確か、死んだ後よね?」

「そうなんです。ゴッホは生前、夢のために絵を描き続けてましたけど、汗して働く生活の中にこそ価値があると言ってた時期があるんです。その発言が心に残って」

さらに続けた。

「だから、自分もそうあろうと思って飾ってるんです」

「へー、なんか深いね。いいな、そういうの。それでか、バイト多いの」

「まあ、順番は逆ですけどね。バイト続けるために、この絵を飾ったっていうか。働かねばならないから、そのために、、、それに殺風景な部屋にいいじゃないですか、この絵。てか、ただのコピーですけど」

「ご両親は、そんな仁科くんを息子に持って誇らしいね」

紗奈がそう言うと、反応に困った。

「そうですかね」

とりあえず、そう返事したが、流石に取り繕おうにもなんか隠し落とせないと感じて、コーヒー豆をガリガリ挽きながら、俺は親が蒸発したこと、学費、生活費を自ら工面していることを話した。

「ごめんなさい、、」

紗奈は口をつぐんでしまった。

「俺なら大丈夫ですよ。それより、せっかく豆挽いたんで、コーヒー淹れましょう」

俺は沸かしたお湯で、挽いた粉をドリップして、紗奈のカップにコーヒーを注いで、それを差し出した。

「ミルク入ります?」

「私はなくていいよ」

紗奈は少し笑顔を取り戻して、そう言って、冷ましながら一口飲んだ。

「美味しい」

「苦味と酸味がいいバランスじゃないです?」

「うん、うん」

紗奈はカップのコーヒーを冷ましながら、相槌を打っている。

「そういえば、この前の、、月曜日の朝、◯◯(乗り換え駅)で電車乗り換えてました?」

俺は、今日最も聞きたかった疑問をぶつけてみた。

「え?、、、月曜日ね、、、、うん、そう」

紗奈の顔が明らかに曇った。

やはり、なんかある、と俺は思った。

「この路線、朝の満員電車、ヤバイですよね。いつもいつも潰されて、息するのも辛いですもん。いつも大丈夫です?」

紗奈が少し間をとって口を開いた。

「私ってさ、なんかおかしくなかった?」

「胸元押さえてたように見えましたけど」

「そっか、見てたのか。実はね、あの日、電車の中でワイシャツの胸のボタン開けられて、中に手入れられたの。しかも、スカートの中も。それで走ってた」

「それって、痴漢ってこと?」

すかさず、俺は聞いた。

「うん。あの日だけじゃなく、いつもなんだよね。満員電車に乗ると、いつも」

紗奈は深いため息をつきながら言った。

「それって、駅員に知らせるとか、声上げれないんです?」

紗奈は目に薄ら涙を浮かべているのがわかった。

「あれって声上げると、そのために時間くっちゃうし、急いでるのに、ほんと迷惑なんだよ。それに違うと、冤罪って逆にこちらが悪くなるし」

「結構、声上げるのも、勇気いるんだよ。私は、ああいう行いは決して許したくない。、、、正直、もっと強くなりたい、、、」

俺は言葉が出なかった。

僅かに頷くことしかできなかった。

紗奈に対してやった、自らの行いも同じだと思っていた。一方、そんな資格はないかもしれないが、何か、紗奈のために力になれないかと思ったというのも事実だった。

すると、紗奈は目に溜まった涙を拭うと、少し押し黙った後、続けた。

「ね、仁科くんって、月曜にその時に電車に乗ってたんだよね。朝その時間に乗るんなら、今度一緒に乗ってくれない?」

紗奈から思わぬ提案を受けて、俺は本来なら嬉しいはずだが、口の中に苦いものが広がる感覚があった。俺は紗奈に対する禊ぎ、報いと思い、引き受けることにした。

「わかりました。一緒に乗りましょう」

俺は週一回月曜日しか、その時間の電車には乗る予定はない。だが、そんなことは口が裂けても言わぬことを決心した。

「ありがとう。じゃあ、、毎朝七時半に家出るってことで大丈夫?、、それじゃ、申し訳ないけど、月曜からよろしくね」

紗奈はじっと俺の目を見て、微笑んで見せた。

その日、俺は以前、夜に紗奈が眠っている間に撮った動画や紗奈がいない間に撮った下着の写真を全て消去した。

***

月曜日の朝七時半。

俺は、朝一限目の講義とその後のバイトの準備を済ませて、玄関に立っていた。

いつもより準備が早く終わっていた。

隣の501号室のドアが開く音がして、それに合わせて、俺も部屋を出た。

「おはようございます」

俺は自宅の戸締りをしながら、紗奈を横目に挨拶した。

「おはよう!」

紗奈も返してくる。

当然だが、紗奈はスーツ姿だ。

改めて見ると、立ち姿が実に美しい。

見惚れて凝視してしまわないように、見ては視線を外し、それを何度も繰り返していた。

街灯が等間隔に並ぶ道を二人並んで、駅まで歩いた。

その間、ほとんど、俺の掛け持ちバイトの話をしていた。何が一番大変かとか、何処でバイトしているかとか。

やがて、駅の階段を登り、列に並んで、満員電車に乗り込んだ。

「今日も相変わらず、すごい」

「うん」

俺が混み具合に呆れていると、紗奈も小さく頷く。

列の後ろから圧を感じ、二人とも流されるまま電車の奥に押し込まれる。

紗奈と離れないように意識して身体を寄せ合った。

紗奈の手や身体が時折、俺のそれらと触れ合う。その度に、俺は自分の胸がキュッと熱くなるのを感じていた。

俺は電車の中で紗奈に対して、やや横に立ち、概ね斜めに立ち位置をとった。俺の左半身が紗奈の右半身と寄り添う形だ。

紗奈はいつもと同じ大きめの革製のバッグを抱えている。

彼女の美しい顔をこんな近くで見れることに、大いに満足していた。

満員電車の中は、こんなにも大勢が乗っているにもかかわらず、話し声はほとんどしない。

今日も、多くが乗客がスマホ画面を眺めていたり、上部の広告などを見つめている。

すると、突如、紗奈は俺に目線を送ってきた。

何やら遭ったらしい。

俺は紗奈のバッグを少しずらして、下を覗き込むと、浅黒い手がスカートの上から紗奈の恥部を鷲掴みにして撫でているのが見えた。

手つきがいやらしい。

揉むように撫でている。

俺はその手に著しい嫌悪感を抱いた。

その手を掴もうと、更に紗奈のバックをずらすと、その手はどこかに消え失せてしまった。

どこからか、チッ、と舌打ちのようなのが聞こえた。俺はその声の主を探すが、誰も彼もが怪しく見えてきて、結局誰かなんてわからなかった。

俺は紗奈を守ろうと、彼女の身体を恐る恐る抱き寄せた。彼女の肩が余計に華奢に感じる。柑橘系の香りが俺の鼻を掠めていった。

すると、次の瞬間、電車は大きく揺れた。偶然にも、二人の体勢もずれて、俺の息子が紗奈の下腹部に密着してしまった。しかも、次第に硬直していく。

紗奈との距離感が今までにないくらい近過ぎる。

こうなっては俺が浅黒い手のやつと変わらない。離れようにも、身動き一つ取れない。

紗奈は俺の息子に気づいているだろうか、いや、こんなのわかるよな、絶対嫌われたなと考えながら、身動きを取れず、そのまま罰が悪い体勢で、紗奈の肩を抱いたままでいた。

その間、紗奈は表情を変えず、無言でスマホ画面を眺めていた。

やがて、電車は俺たちの乗り換え駅に着いた。

俺たちは、人の波に乗るように、電車から降りた。お互い軽く声をかけて、それぞれの方向に別れた。

それから俺は一日中、罰が悪い気持ちを抱えながら過ごした。

その夜、俺はカフェのバイトを終えて、夜九時に帰宅した。シャワーを浴びて、大学の研究課題に取り組んでいると、夜十一時頃、自宅のインターフォンが鳴った。

こんな時間に鳴ることは今までなかったが、誰かは当然予想できた。玄関のドアを開けると、そこに紗奈が立っていた。

「こんばんは」

二人とも何気なく挨拶を交わす。

「今朝はありがとう」

紗奈はぺこりと頭を下げる。

「こちらこそ役に立てました?何にもしてないけど。嫌なことなかったですか?」

「今日はちょっとやられてたけど、仁科くんが守ってくれたおかげで、触られる時間があんまりなくてよかったと思う」

「それならよかった」

俺はとりあえず返した。

紗奈は俺の息子が当たっていたことは何とも思っていないのだろうかと、どんどん不安が増してくる。

話ぶりからは何も思っていないようだが、彼女の口からは言いにくいだけなのではないかと思った。

俺が口を開こうとしたその時、先に、紗奈がスマホを取り出して、続けた。

「念のためさ、LINE交換しててもいい?」

俺は一瞬、ドキッとした。

そんなことがあっていいのか。内心嬉しいは嬉しいものの、何とも言えない表情だったに違いない。

結局、俺は承諾した。

そして、「また明日」と声を交わして、玄関のドアを閉めた。

この話の続き

その日から俺は、毎日、紗奈と同じ電車に乗った。たとえ、大学の講義やバイトが朝十時からであっても、朝七時半に家を出た。それから、朝のこの時間が俺の勉強時間にもなった。それはそれで本業たる学生の本分を果たせている気がして、充実した生活を送れていた。俺は、こうした朝の日課が楽しみになった。…

-終わり-
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