体験談(約 25 分で読了)
(主に知的な)障害がある女性と仲良くなった話~二人目 ナルミちゃんとの思い出~(1/4ページ目)
投稿:2022-08-29 02:01:17
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お初にお目にかかります。わたくし、ごんべえと申します。もちろん仮名です。仕事は人と接する仕事…ま、大体何でもそうですね。身バレを防ぐためにぼやかしますが、障害がある人と接することが多いお仕事をさせてもらっております。障害がある人…と聞くと、みなさんどんなイメージでしょうか。…
ユウカさんとの楽しい一日をすごした後、手帳にあったユウカさんの住所を調べてみると。それはなんと、通勤ルートすぐ近くにあるアパートであると分かりました。そして…なんという偶然か。どこかで会えないかなぁと思っていたら、ある日の朝のこと。ごみ出しで外に出てきたユウカさんを見つけてし…
ユウカさんに続きまして。
…ユウカさんって誰だ?という方は、
この話の前に「一人目」として別の話をしていましたので、そちらを見ていただくものとして。
今回みなさんに紹介致しますのは、今のご時世柄、
大変に「タイムリーな」話となってしまう方かもしれません。
何がとは言いませんが、お話していく中でお察しいただければと思います。
今回の主人公は、おそらく20代半ばと思われる「ナルミちゃん」です。
前回のユウカさんに対して、こちらはナルミ「ちゃん」。
もちろん、20代半ばという若さがあるから敬称が異なるというわけではありません。
そんな失礼なことはいたしません。
彼女を「ちゃん」と呼ぶのは、その見た目から。
青紫色のアイシャドウに、少しラメ入りのウルウル系な口紅(リップ?)というお化粧を必ずしていました。
ネコちゃん系の、地下アイドルのような風貌で、身長も小柄でした。
確実に155センチ以下。
もしかすると140センチ台であったのかもしれません。
年齢がはっきりと分からないのは、ナルミちゃんに聞いても答えがその都度変わるから。
…その程度の知的な能力、ということなのでしょう。
驚くほどよく話せますし、話している雰囲気は「普通」に聞こえます。
が、内容を聞いていくと、その幼さがよく分かりました。
難しい話は何も分かりません。感覚的に話しているだけ。
例えばテレビのあらすじ。
おそらく幼児向けアニメの内容でも説明できません。
「悪いことをしてバイバイキーンと飛んでいく」程度のことは分かるようですが、それが関の山。
文にして説明しようとすると、それは難しい。
…「説明」という行為自体がそれなりに高等技術なのですが。
それほどでもないと思われること…おそらく一ケタの足し算引き算も難しい。
自閉傾向がある方だと、この程度の知的な能力の方の場合、
やり取りとしての会話が難しい方もいらっしゃることと思います。
それは、自閉症の特徴の一つとして言語面での難しさがあるため。
自然と発達していくはずの言語的な能力が、
脳機能の何らかの障害のために育ちにくい…。
そんな様子が見受けられるのですが、
ナルミちゃんにはそういう要素はありませんでした。
純粋に知的な障害がある、という女性だったのだと思います。
…さて。
そんなナルミちゃんとの出会いは、かなり変わった入口からのものでした。
それは…恥ずかしながら。
僕が「出会い系サイト」と呼ばれるものをいじっていることが職場でバレてしまったから。
どこで盗み見られたのか…あるおじさん職員に見つかってしまいました。
あの当時はまだ、緑に白抜きの吹き出しマークのアプリがライフライン化された今とは違い、
まだまだガラケーが頑張っていた時代でした。
なんとソーラーパネルを搭載したガラケーがあったほどですが、
みなさん覚えていらっしゃるでしょうか。
…そんなガラケー時代、活躍したのがメーリングリスト。
サービスを提供するサイトを介して、職場の連絡網が構築されていました。
そのため、直接的に個人のメールアドレスなどを知らずとも、
メーリングリストに登録されている者同士、誰でも連絡を取れるようになっていました。
まぁ、やっていることは今とほぼ一緒ですけどね。
それがまだ「メール」という手段であっただけで。
長くなりましたが、ある日の僕は、そのメーリング経由で届いたメールで、
このおじさん職員に呼び出されるわけです。
おじさん職員のことは、仮にヨシさんと呼ぼうと思います。
五十代のベテランさんで、若手の僕らでも話しやすい、良いおじさんです。
が、そんなおじさんから「ちょっと個人的に話したいことがあって」と。
ちょうど休みの日がシフトで重なった日の昼間に、食事ついでにと呼び出されました。
…え?夜飲みながら、ではないの?
と、内心では思いつつ。
ラーメン行こうかと誘われ、おいしいラーメンをいただきに出発します。
車は出してくれるとのことで、僕は自転車で集合場所まで行きました。
正直なところ、直接自転車で向かうことができる場所ですが、
連れて行ってやるよと言われれば、断るわけにもいきません。
「休みの日にごめんよー」
「いえいえ、ありがとうございます」
「デートじゃなかった?」
「今の所相手がいないのでっ」
…この当時の僕はまだ、彼女がいなかったためにしばしば「彼女いないキャラ」をいじられていました。
そのあたり、色々世間話をしつつ…。
「あのさ、率直に聞いてもいい?」
「なんですか?」
「出会い系ってイイの?」
この時点で、僕はまさか出会い系愛用者であることがバレているとは思ってもいないので。
適当に話に乗るしかないと思っていました。
それでも、ヨシさんは「誤解せずに聞いてほしいんだけど」という前置きで、
ど直球ストレートな豪速球をぶち込んできました。
「実は君がいじっていた出会い系っぽいケータイの画面が見えちゃってさ」
「…」
「それで一人の男として、話を聞きたいのと、ちょっと相談もあってね」
「相談、ですか?」
やはり、出会い系をいじっているとバレるのは、ものすごく恥ずかしいことで。
一瞬にして顔が真っ青になったと思いますが、
その後の話の流れは予想外で、すぐに正気に戻りました。
よりにもよって、こんなベテランのおじさんから相談、
しかも話の流れで出会い系が出てくるとは…。
だいたい、僕は職場で出会い系につなぐことはないので、
どこでバレたのかも気になる所でした。
が、その辺のやり取りは置いといて。
「車の中だからって、職場である以上安心しちゃダメだよっ」
…ええ。休憩中に、車に戻ってケータイを出会い系につなぐことはありましたとも。
そしてそれを、たばこ休憩のヨシさんにこっそり見られていた、と。
そんなこんな、色々な話をしながらラーメンをすすり、喫茶店に行き。
注文をして一段落という所で、ヨシさんはまた剛速球を投げ込んできました。
「突然なんだけどさ…この子、どう思う?」
そう言って見せられたのは、未だに登場する気配もない、
今回の主人公であるナルミちゃんの写真でした。
冒頭で説明したようなお化粧に、ゴスロリ風な黒いドレス。
そんな画像がヨシさんのケータイから出てくること自体が驚きでしたが、
女の子自体はメイド喫茶か何かの子なのか、かわいらしく見える子でした。
「え?…普通にかわいい、ですね」
「でしょ。もしサイトに出てきたらうれしい?」
「そりゃぁ、まぁ…」
「もしもさ、この子がね、条件はあっても、基本いつでもオッケーってなったら、定期的に会おうと思う?」
…どういうこと??
頭の中で「?」がたくさん浮かびました。
そう言われてみると…当時は「ホ別2」とか3とかいう言葉が当たり前のように飛び交っている時代でした。
が、何人かと出会いはしたものの、もう一度会おうとなった方はいませんでした。
女性の方は、良いカモだと思ったのか連絡先を聞いてくれたりしましたが…
こちらからはもちろん、相手からも連絡が来ることはなく。
「出会い系=その場限り」という頭でした。
もちろん「セフレ」なる存在ができればうれしいですが、そんな簡単にはいきません。
そういう意味で考えると、条件というのがどの程度の何なのかは気になりますが。
はじめから「定期的に」という前置きがあると。
何やら気になるものは大いにあります。
「気にはなるけれど、会ってみないとちょっと分からないです」
「ははっ、そうだよな。そう言うと思ったよ。そんな君だからって話でもあってね。まさか君がって思ったけどね」
ちょくちょくディスられることに心が傷つきつつも、こんな立場では何も言えません。
そして、話もどんどん進んでいきます。
「良かったらさ、今日会えるけど、会いたい?」
「えっ、今日ですか?」
「うん。元気になれそうなラーメンも食ったし、君さえよければ」
「ヨシさん、結構グイグイ系のおじさんだったんですね…」
「いまさら気付いたの?」
…そんなこんなで、僕は全く見ず知らずのナルミちゃんと出会うことになりました。
場所は職場からそれほど遠くない範囲。
職場付近に住んでいて、僕が自転車を乗り回していることを知っているヨシさんは、
場所さえ分かれば自分で行けるだろうと、ナルミちゃんの自宅を教えてくれました。
昔ながらの長屋が何棟か並んだ、ちょうど真ん中あたりの棟の一番奥。
そこが画像の女の子であるナルミちゃんの自宅なのだそうです。
「あの、自宅へ行くんですか?」
「信じられないだろうけれど、訳ありでね。するのもあの家だよ」
「一人暮しなんですか?」
「まさか。あんなのに若い子が一人でいると思うか?」
「ですよね…え?でも、家族がいるんですか?」
「あぁ。おばあちゃんとお母さんがいる」
「えぇっ!?それ無理じゃないですか?」
「だからさっきも言ったんだけど、色々なんだ」
喫茶店を出る前に聞いた話によれば。
ナルミちゃんは、家族が理由でお金が必要な状態にあるらしく。
それゆえに、危険な不特定多数を相手にするよりは、
安定的に安全な人からお小遣いを稼ぎたいという思いがあること。
そして…。
「じつはさ、知的な障害があってね。それもあって、行動が制限されちゃうんだよね」
「そうなんですか」
「何も知らずにそういう状態の子と出会ってもさ、相手もアレ?ってなるだろ?」
「まぁ…そうですよね、たぶん」
「でも、君ならこういう業界にいるんだし、そのあたりバッチリだろ?」
「バッチリっていうか…でもまぁ、それでどうってことはないと思います」
「だろっ?それでいて君は幾分クソまじめすぎるけど、本当は適度に抜けていて良いキャラの好青年だからね」
…お選びいただけて光栄でございますわ。
「最後に言っとかないといけないのは、これは彼女自身の意志ではなくて、
お母さんやおばあちゃんの影響でこういう流れになった部分もあってね」
「どういうことですか?」
ここで初めて、ヨシさんのしゃべりが止まりました。
次に続いた言葉は…それ以外に言葉がなかったのでしょう。
普段のヨシさんであれば口にしないであろう言葉。
「君だから率直に言うけど。まぁあれだ。金づるだよな」
「あー…」
「世の中そんなもんだ。それで救われる人もいる。そうだろ?君は欲求を満たし、相手は対価を得て生活ができる。ニーズに対するサービスがあって、そこに対価が発生する。どんな場所にも金が付いて回る。そして俺らは生きている。結局金かって話で、嫌なもんだけど」
「そうですね…」
「だから自由だ。嫌なら何も気にせず断ってくれよ」
「あ、いや、そこは大丈夫です」
「何が大丈夫だよっ」
…そんなこんなで、僕は集合場所まで戻ってきました。
「最後に一つ。これが一番重要なことなんだけどね」
「なんですか?」
「たぶん…いや、分からないけれど。お母さんもおばあちゃんも、変な勧誘をしてくるかもしれない」
「勧誘、ですか?」
「まぁその、なんだ。色々怪しいものを売りつけるとかさ、あるだろ?」
「詐欺とか、そういうのですか?」
「んー、それはちょっと違うんだけどさ。その、オーラとかさ。スピリチュアルな、なんか宗教とか色々あるだろ?」
…一昔前、その手のものが流行った時期がありました。
が、流行り廃りに関係なく、古くから今まで、似通ったものは存在しているのでしょう。
「…そういう感じなんですか?」
「まぁ、君なら行けば分かるかな…色々ちゃんと知識があるみたいだしな。それもあってなんだけど。とにかくそういうのは気にせず断ればいいから。色々が発生するのは、あくまでナルミちゃんに関することだけっていうのを覚えておいてほしい」
この後の流れはこんな手順でした。
準備ができたら、教えてもらったナルミちゃんの自宅まで行き、ヨシさんに到着した旨をメールする。
そしてヨシさんからオッケーの返事が来たら、インターホンを押さず、そのまま玄関を開けて入れば良い。
この時点で、わけの分からない急展開な出来事に不安感はありつつ。
話の流れ的に、少なくとも殺されることはないだろうし。
そういう意味合いでの心配はなさそうだと、漠然とした安心感がありました。
それよりなにより、ヨシさんはこの話にどうやって絡んでいるのだろうか。
もしかして、ヨシさんもこの、ナルミちゃんという子と…?
疑問は膨らむばかりでした。
「玄関を開けると、お母さんが待ってるから、あとは話を聞いて楽しんでこれば良い」
…時刻は夕方。
日が沈み始め、長屋の並びはすでに薄暗く、そして静かでした。
長屋の他の部屋には人がいるのか、それともいないのか。
それすらも分からないような雰囲気で、どこかタイムスリップしたような感覚すらありました。
木が黒くなって、失礼ですが小汚い…作りとしては磯野家の玄関のような。
ああいう引き戸タイプの玄関を開けると。
全身白色という女性が、三つ指をついて頭を下げてお出迎え。
引き戸を開けて、少し目線を下げた所にそんな方がいらっしゃるので、正直なところ、すごく驚きました。
「ようこそおいで下さいました」
「え、あ、はい、どうも…」
「お入りください」
右手を小さく動かして、中に入るように身振りをしながら…上げられた顔は、なかなかとお綺麗なおばさまでした。
ナルミちゃんと同じく、青紫色のアイシャドウをされていて、
口紅は落ち着いた暗めのトーンの赤…に、見えました。
入って左手に通されると、そこは居間のようでした。
目立っていたのは、何か「祭壇」のようなスペース。
ヨシさんが言っていた意味が分かりました。
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