成人向けサイトのため、18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。

あなたは18歳以上ですか?

※お子様と端末を共同利用している場合はチェックしないでください。その場合は24時間有効です。


※18歳以上でボタンが反応しない方は「こちら」をから入ってください。

【現在43,813話】月間280万人が訪れるアダルト体験談・官能小説投稿サイトです。投稿した体験談や小説が高評価を受けると広告が非表示になります。エチケンにあなたの体験や妄想を投稿してみませんか?

今日の人気記事(他サイト)

体験談・小説メニュー

今日の人気記事(他サイト)

官能小説・エロ小説(約 18 分で読了)

鴨太日記〜優しさと慈愛の中へから第2話(1/2ページ目)

投稿:2026-07-06 00:15:13

人 が閲覧中

あとで読む

この話のシリーズ一覧

本文の表示設定

文字設定や人物置換設定を開く

本文(1/2ページ目)

謎のさくしゃ◆GRknEWE
前回の話

「東京の雑踏の中、看護師の仕事を終えた北内遼子は、息を切らして中学校の校門へと向かっていた。39歳、シングルマザー。生活のすべては、中学1年生になった息子の鴨太を中心に回っている。鴨太の身長は145cm。クラスの男子と並ぶと一回り小さく、どこか幼さが残るあどけない顔立ちをしている。しかし、その瞳…

楽しかった3連休が終わり、らめが大阪へ帰る時間がやってきた。

玄関先で、らめは鴨太の小さな肩を優しく掴み、目線を合わせて微笑む。

「鴨太くん、また来月、必ず迎えに来るからね。お留守番、できるかな?」

それは単なる別れの挨拶ではなかった。二人の間にある絆を再確認し、来月の再会という希望を鴨太の心に刻み込む、大切な儀式のようなものだった。

鴨太は、らめの言葉をじっと聞いていた。少し寂しげな表情を浮かべたかと思えば、次の瞬間、彼はリビングの隅へダッシュで駆け寄った。

ガサゴソ、と慌ただしい音が響く。

みんなが何事かと見守る中、鴨太が力いっぱい引きずってきたのは、大きなダンボール箱だった。彼はその箱を、まるで「これに入れろ」と言わんばかりに、らめの足元にドンと置いた。

「らめちゃん、これ!荷物、早く入れて!」

鴨太は真剣そのものだ。彼は来月まで待つという「時間」の概念よりも、「らめと一緒に行く」という目的を優先していた。今すぐ、この箱に自分とらめの荷物を詰め込み、一緒にお家へ帰る気満々だったのだ。

そのあまりに直球な「旅支度」の催促に、見ていた英子も高代も、そして遼子までが思わず吹き出した。

「鴨太、それに入れても帰れないのよ」

遼子が涙目で笑いながら教えると、鴨太は「えーっ!」と不服そうに口を尖らせる。その姿があまりに可愛らしく、そして彼なりの一生懸命さが溢れていて、玄関は爆笑の渦に包まれた。

らめは膝をつき、そんな鴨太を抱きしめた。

「ありがとう。じゃあ、来月は本当にこの箱を持ってきて、一緒に詰めるね」

「うん!約束!」

鴨太は力強く頷いた。箱を引っ張ってきたその無邪気な行動力こそが、この先、彼を新しい環境へと運ぶ原動力になるのかもしれない。

らめを見送った後、リビングには少しの静寂が戻ったが、鴨太の顔は晴れやかだった。来月という未来が、彼にとっては確実に「何か良いことが起きる時間」として確定している。遼子は、そのダンボール箱を片付けながら、鴨太の背中が、以前よりもずっと頼もしくなったように感じた。

ダンボール箱の騒動から一夜明け、遼子は現実的な一歩を踏み出すことを決めた。

「鴨太、いい?この箱にはね、らめちゃんが迎えに来る日までに、ママが鴨太の好きなもの、全部詰めておくからね」

遼子がそう伝えると、鴨太は納得したのか、何度も大きく頷いた。まるで、これから始まる新しい生活へのカウントダウンを共に楽しんでいるかのようだ。

翌日、遼子は病院の師長室を訪れた。看護師という仕事は、どこも常に深刻な人手不足だ。しかし、遼子が切り出したのは、これまでよりもさらに踏み込んだ過酷な提案だった。

「師長、来月からはフルタイムでシフトに入らせてください。夜勤も、通常通り、いえ、それ以上でも引き受けます」

師長の目は驚きで見開かれた。遼子の現状を知っているからこそ、その申し出は重い。

「遼子さん、それは本当に助かるけれど……鴨太くんのことはどうするの?一人で抱え込んで、あんたまで倒れたら元も子もないわよ」

遼子は、高代と共に練り上げた「あの計画」を、一つひとつ丁寧に説明した。大阪の学校との連携、らめや周囲のサポート体制、そして何より、鴨太にとっての「居場所」が確保されたという確信。

説明を聞き終えた師長は、深い溜め息を吐いた後、ふっと表情を和らげた。

「そう……。あんたがそこまで覚悟を決めたなら、もう止める権利はないわね」

師長は力強く、遼子の肩を叩いた。

「良い決断をしたじゃない。母親として、看護師として、あんたは最高の道を選んだわ。現場としても、これほど心強いことはないわよ」

師長の言葉に、遼子の背筋がすっと伸びた。これまで鴨太を守るために「謝り続ける」だけの毎日だったのが、これからは「未来を作る」ための働き方に変わる。

家に戻ると、鴨太はまだあのダンボール箱の近くで、らめが残していった小さなリボンを大事そうに握りしめていた。その背中を見つめながら、遼子は心に誓う。

来月、この箱を笑顔で満杯にする。そして、鴨太を大阪の、新しい世界へと送り出すのだと。

翌朝、遼子は手を引いて校門をくぐった。台東区立堤中学校。鴨太にとっては、来るたびに緊張と謝罪の冷や汗が流れる場所だった。

「先生、お時間いただけますでしょうか。今日でお話ししたいことがありまして」

職員室に顔を出すと、担任の野上隆二が怪訝そうな顔で立ち上がった。体格のいい体育教師である野上は、これまで鴨太の突飛な行動に何度手を焼いてきたか知れない。特に女子生徒へのデリカシーのない言動は深刻で、野上の威圧的な声に鴨太が萎縮し、大泣きして取り乱す光景はもはや日常茶飯事だった。

「北内さん、また何かあったんですか?鴨太くんがまた女子生徒に……」

野上の声に、鴨太がビクリと肩を震わせる。遼子は鴨太を背中に隠すようにして、静かに言葉を継いだ。

「いえ、そうではありません。……今日、鴨太の転校の手続きをお願いしたくて参りました」

「転校?」

野上の目が丸くなった。

「どこへですか?この状況で、しかも一人で登下校もままならず、身の回りのことだって……。失礼ですが、他校で一体どこが鴨太くんを受け入れてくれるというのですか?」

野上の困惑はもっともだった。教師の目から見て、鴨太は「今の学校というシステム」からは完全にはみ出した存在だ。どこへ行っても同じことの繰り返しになるだろう、という諦めにも似た憐れみが、彼の表情には浮かんでいた。

遼子は小さく首を横に振った。

「いいえ。鴨太を受け入れ、共に歩んでくれる場所は見つかりました。……鴨太も、彼なりの方法で新しい世界を見つける準備ができたんです」

鴨太は、野上の鋭い視線に耐えられず、じっと遼子の服を掴んでいる。だが、以前のような絶望感はなかった。彼の頭の中には、ダンボール箱と、らめの優しい笑顔、そしてこれから始まる新しい生活への淡い期待が詰まっているからだ。

「これまで、本当にお世話になりました。……鴨太も、この学校でいろんなことを経験させていただきましたから」

野上は言葉に詰まり、最後にはバツが悪そうに書類に視線を落とした。問題児としか見ていなかった少年が、まさか自ら進んで新しい環境へ飛び込もうとしていること。その事実に、彼の胸には一抹の戸惑いと、ほんの少しの安堵が混じり合っていた。

校門を出る時、鴨太は振り返ることもなく、ただ前を見ていた。

堤中学校の校庭を後にしたその足取りは、不思議と以前よりも軽やかだった。遼子は、鴨太の手を握り直し、心の中で何度も「さようなら」とつぶやいた。この閉ざされた過去に終わりを告げ、彼らは新しい風が吹く場所へ向かっている。

書類を受け取った野上の顔は、驚きからさらなる困惑へと塗り替えられていた。

「大阪の、普通の公立……?北内さん、本気ですか?鴨太くんの状態を考えれば、そんなの……」

野上の頭の中には、今の鴨太が抱える深刻な実情が渦巻いていた。

トイレは未だにおむつが外れず、食事もまた、自分で食べさせれば瞬く間に周囲を汚してしまう。身の回りのことすら一人では完結できない。そんな彼を、専門の支援学校でもない公立中学校がどうやって受け入れるというのか。

「あの……転校先への引き継ぎ書、どう書けばいいんですか。こんなの、正直……」

野上が頭を抱えるのも無理はない。体育教師として、あるいは一人の教師として、鴨太という存在がこの学校でどれほど異質であり、どれほど手のかかる存在であったかを、彼は何よりも身をもって知っているからだ。

遼子は静かに、しかし断固とした口調で先回りした。

「野上先生、ご心配は重々承知しております。ですが、今回の転校に関しましては、引き継ぎの労力を先生方におかけするつもりはありません」

「え……?」

「転校後の生活環境は、これまでとは全く特殊な形で整備されることになっています。ですので、先生方には最低限の事務的な手続きと、これまでの記録の引き継ぎのみをお願いできればと。あとのことは、全てこちらで責任を持って対処いたします」

遼子の声には、これまでになかった強い決意が宿っていた。

以前の彼女なら、先生たちに頭を下げ、鴨太の現状を細かく説明し、何度も謝り倒していただろう。だが、もう違う。大阪には高代という親友がいて、広代という弁護士がいて、らめという聖母がいて、何より、その可能性を信じてくれた学校関係者たちがいる。

野上は、遼子の落ち着き払った態度に、まるで別人のような凄みを感じていた。

鴨太の手を引くその横顔は、かつての「謝り続ける母親」ではない。自分の息子の運命を、自分の手で選び取った「意志ある女性」のものだった。

「……分かりました。書類に関しては、事務方と調整して作成します。北内さん、本当に……これでいいんですね?」

「はい。これからは、彼が彼らしくいられる場所へ行くんです」

職員室を出る遼子の足取りは、淀みなくまっすぐだった。野上は、その背中をじっと見つめることしかできなかった。彼が抱えていた鴨太という「負の遺産」が、自分たちの知らないところで、全く別の「未来の種」に変わろうとしていることを、その時の野上はまだ完全には理解できていなかった。

荷造りを進めようとクローゼットを開けた遼子は、思わず絶句して立ち尽くした。

そこに並べてあったはずのバッグが、見当たらない。いや、正確には「中身が消えている」のだ。遼子の愛用する財布、毎日持ち歩く化粧ポーチ、家の鍵に車の鍵……。さらには、病院のロッカーから持ち帰っていたはずの聴診器やスクラブなどの仕事道具、鴨太のおもちゃ箱までが、すっかり空っぽになっていた。

(……犯人は、一人しかいないわね)

リビングの方へ視線を向けると、鴨太が一生懸命、ダンボール箱の隙間を埋めようと必死に何かを詰め込んでいる姿があった。

彼なりに「らめちゃんとの新生活」に向けて、家中のあらゆるものを「大事なもの」としてせっせと箱へ移動させていたのだ。

遼子は溜め息をつきながら鴨太に歩み寄った。

「鴨太、ママが困るものまで詰めちゃダメだよ。これはママの仕事道具だし、これはお財布だよ」

全く、手当たり次第に詰めているはずなのに、なぜか遼子が生活に欠かせないものばかりを的確に抜き取っている。その「才能」には苦笑いするしかなかった。鴨太はきょとんとしていたが、遼子に諭されて素直にアイテムを返していく。

しかし、箱の底を整理していた遼子の手が、ふと止まった。

何か厚みのある、立派な紙の束が底に押し込まれていた。

「……何かしら、これ」

紙を手に取り、広げてみる。そこには格調高い書体で、大きくこう書かれていた。

**『看護師免許状』**

遼子の思考が数秒間、完全に停止した。

「……免許?」

その言葉の意味を脳内で反芻した瞬間、遼子の背筋に電気が走った。

「……っ!!!?」

危ない。危なすぎる。

鴨太がダンボールの底へ、あろうことか遼子の全人生を支える「看護師免許」を滑り込ませていたのだ。もしこのまま箱に詰められ、梱包テープで封印され、大阪へ送られていたら――。

遼子は免許を胸に抱きしめ、へなへなと床に座り込んだ。

鴨太は「それも大事なやつだよ!」と無邪気に笑っているが、遼子は心臓が早鐘を打つのを抑えられない。資格まで失うところだった。この箱にあと何を詰めたのか、確認するだけで寿命が縮まりそうだ。

「鴨太……お手伝いは嬉しいけれど、ママの免許まで持って行こうとしないで……」

呆然とする遼子の横で、鴨太は「らめちゃん、喜ぶかな」と箱の中身を覗き込んでニッコリと笑った。その純粋な笑顔と、命からがら守り抜いた免許状。遼子は笑うしかない状況の中で、改めてこの「予測不能な引越し」の険しさを噛み締めていた。

遼子は、冷や汗がようやく引いた後、その出来事を笑い話にして高代に電話した。

「……というわけで、私の看護師免許まで箱に入れられそうになったのよ。全く、心臓がいくつあっても足りないわ」

電話の向こうで、高代は腹を抱えて爆笑していた。

「あはは!そうね、鴨太くんらしいわ。あんた、まだ甘いわよ。こっちでも同じような騒動があったんだから」

高代が語ったのは、鴨太が以前大阪へ泊まりに来た時のエピソードだった。らめが翌日の学校の準備をしているのを見て、鴨太も自分なりに「通学リュック」をパッキングしようと張り切っていたのだという。

「らめが学校に行こうとしてリュックを背負ったんだけど、なんだか異様に重いのよ。開けてみてらめも仰天したわ」

なんと、そのリュックの中にはらめの下着がこれでもかと詰め込まれていた。それだけではない。何か白いものがたくさん貼り付いているなと思ったら、それは個包装のままのナプキンだった。

「鴨太くん、らめが一番『大事』にしているものを、全部自分のリュックに詰め込んでたのよ。らめもそれを見て、真っ赤になって爆笑してたわ」

遼子は呆れつつも、思わず笑みがこぼれた。

鴨太にとって、らめの身の回りのものは、彼女の温もりそのものであり、一番の宝物なのだろう。彼のチョイスはいつも、本人にとっては至って真剣かつ純粋な「必需品」なのだ。

「……あの子、ある意味すごい運を持ってるわよね。一番見つかってはいけないものや、一番必要なものを、直感的に引き当てるんだから」

「本当にね。でも、そんな鴨太くんの『一番欲しいもの』が、らめという存在そのものなんだって考えたら……なんだか少し、泣けてきちゃわない?」

高代の言葉に、遼子は深く頷いた。

鴨太の行動は突飛で、大人の常識から見れば大惨事寸前だが、その根底にはいつも「大好きで大切な人と繋がっていたい」という純粋すぎる願いがある。

「そうね……。大阪に行ったら、今度はどんなものを詰め込んでくれるのかしら」

遼子は、免許証を丁寧にファイルにしまいながら、未来の生活に思いを馳せた。鴨太のその無邪気な「運の強さ」が、新しい大阪の地で、どんな奇跡を引き寄せてくれるのか。もしかしたら、この荒唐無稽な日々こそが、彼ら家族にとっての「一番の宝物」になるのかもしれない。

いよいよ迎えた、出発の日。

朝早くから東京のマンションに現れたらめは、いつも通りの涼やかな表情で、しかし心なしか胸を高鳴らせているように見えた。遼子と高代が、二度、三度と念入りにチェックし、鴨太の「爆弾コレクション」を全て取り除いたダンボール箱は、一足先に大阪へと発送済みだ。

「よし、行こうか、鴨太くん」

らめが慣れた手つきで抱っこ紐を広げると、鴨太は待ってましたとばかりに、その中へと吸い込まれていく。密着した二人の間には、既に安定した空気が流れていた。

引っ越し準備の合間を縫い、遼子は鴨太を連れて堤中学校へ最後の挨拶に向かった。

職員室のドアを叩くと、出てきたのは野上だった。しかし、彼の目に飛び込んできたのは、予想だにしない光景だった。

「な、な……何事だ!?」

174cmの長身の少女に、抱っこ紐で密着して抱えられた鴨太。その姿は、学校という場所にはあまりに異質で、圧倒的な存在感を放っていた。

野上は言葉を失い、目を見開いたまま立ち尽くす。

これまで自分が「問題児」として扱い、威圧感で震え上がらせてきたはずの鴨太が、らめの胸に顔を預け、この上なく幸せそうな表情で、可愛らしい寝息を立てていたからだ。

「先生、今日で転校の手続きは完了です。最後にお礼が言いたくて」

遼子の声に、野上はようやく我に返る。

彼が見たのは、誰よりも安心しきった少年の顔と、そんな彼を慈しむように抱く一人の少女の姿。その光景の前に、体育教師としての威圧感や、教える側としての立場など、一瞬で意味をなさなくなった。

「あ……ああ。……そうか、行くのか」

野上は、抱っこ紐の中ですやすやと眠る鴨太を、複雑な面持ちで見つめた。

怒鳴り散らし、泣かせ、困惑させ合った日々。それが嘘のように、今の鴨太には「守られている」という確固たる自信が満ちている。

「……あいつ、こんな顔もできるのか」

野上は小さく呟き、肩の力を抜いた。教員として、この少年に何一つ救いを与えてやれなかったという後悔と、それでも彼が自分の足で新しい場所を見つけたことへの、戸惑うような納得感。

「元気でな」

野上のぶっきらぼうで、しかし初めて鴨太に送られたその言葉は、彼が堤中学校という過去に別れを告げるための、最後の一押しとなった。

校門を抜ける時、鴨太がふと目を開け、らめの胸元で小さく笑った。もう、迷うことはない。抱っこ紐の中という聖域を守りながら、彼らは新しい世界へと真っ直ぐに進んでいく。

東京駅の喧騒は、どこか遠くの出来事のように感じられた。

遼子は車から二人を降ろすと、新幹線の改札前で足を止めた。鴨太は、らめの胸の中でまだ夢の中だ。この抱っこ紐は、これから彼が歩む新しい人生そのもののように思えた。

「高代、あとは頼んだわ。この子を……鴨太を、お願い」

遼子の声は震えていた。看護師として、母として、この子を守り抜いてきた日々が走馬灯のように駆け巡る。手放すのではない。彼が彼らしく生きられる場所へ、信じられる人々に託すのだ。

高代は無言で遼子を抱きしめ、そしてしっかりと肩を掴んだ。

「分かってる。あんたの命の一部を預かるんだもの。私たちが、絶対に幸せにする」

そして、らめが遼子の前で立ち止まった。彼女は抱っこ紐の中に眠る鴨太を、慈しむようにそっと撫でた。14歳の少女の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

「ママ……遼子さん。私、鴨太くんを一生、大事にします」

その言葉は、誓いだった。単なる幼馴染としての愛情を超え、らめはこの少年と共に生き、彼が抱える世界のすべてを受け止めると決めていた。彼女にとって鴨太は、ずっとずっと昔から、誰よりも欲しかった宝物であり、自分を自分らしくさせてくれる唯一の存在だったのだ。

「……信じてるわ、らめちゃん」

遼子は涙を拭い、鴨太の小さな足先を優しく握った。

新幹線の発車時刻が近づく。らめは涙を拭い、凛とした表情で前を向いた。彼女の肩には、これから鴨太の人生を背負っていくという重みと、それ以上に大きな愛が宿っている。

「行ってきます」

らめの力強い声と共に、二人は改札の向こう側へと消えていった。

遼子は、二人の背中が見えなくなるまでその場を動けなかった。けれど、不思議と寂しさはなかった。鴨太が今、これ以上ないほど温かい場所へ向かっていることを、肌で感じていたからだ。

空は高く、夏の日差しが東京駅の屋根に反射している。

遼子の新しい生活も、ここから始まる。鴨太のいない部屋を想像するのではなく、大阪で笑っている鴨太を想像しながら、彼女はゆっくりと駐車場へ歩き出した。

新幹線のホームに降り立つと、鴨太は抱っこ紐から顔を出し、周囲の巨大な鉄の塊を不思議そうな目でキョロキョロと見回していた。

「鴨太くん、これから新幹線に乗るよ」

らめがそう告げると、鴨太はまるで世界がパッと明るくなったかのような、とろけるような笑顔を見せた。これまで電車には何度か乗ったことはあるが、新幹線は初めてだ。その特別な響きが、彼の冒険心をくすぐる。

車内に入り、指定された席に座ると、鴨太は迷いなく、いつもの「指定席」であるらめの膝の上へちょこんと収まった。

発車ベルが鳴り、列車がゆっくりと滑り出し、やがて加速していく。

窓の外で、駅の景色がまるで映画のコマ送りのように後ろへ飛んでいく様子に、鴨太は釘付けになった。

「うわあ……!」

彼は窓ガラスに顔をぺたりとくっつけ、目を丸くして外を眺め続けている。その頬が窓の冷たさに少し赤らみ、小刻みに揺れる姿は、どこからどう見ても可愛らしい子供そのものだった。

らめは、そんな鴨太の背中に腕を回し、彼が安心して外の世界を観察できるように支えている。鴨太は、外の景色を眺めながら、ときどき「ねえ、あれなに?」「おっきい!」とらめを見上げて問いかける。らめがその都度、丁寧に答えてやると、鴨太は満足そうにまた窓へと向き直る。

新幹線の振動と、らめから伝わる体温。その両方に包まれて、鴨太の心はかつてないほど穏やかで、幸福感に満たされていた。

隣で見守る高代は、窓越しに流れる景色と、膝の上で目を輝かせる少年を見比べながら、深く息を吐いた。

東京での窮屈な生活から、ついに鴨太は飛び出したのだ。この新幹線は、彼を新しい居場所へと運ぶための、まさに夢の乗り物だった。

「大阪まで、あと少しだね」

らめが鴨太の髪を優しく撫でると、鴨太は「まだ降りたくない!」と膝の上で身をよじって甘えた。らめは笑いながら、「大丈夫、大阪に着いたらもっと楽しいことが待ってるよ」と囁く。

大阪へ向かう新幹線の中で、鴨太の新しい物語が、加速して動き出していた。

「あーあ、行っちゃった」

新大阪駅のホームで、鴨太は博多へと走り去る新幹線の後ろ姿を追いかけるように、精一杯小さな手を振っていた。つい数分前まで「まだ降りたくない!」と膝の上で暴れていたのが嘘のように、今はあっさりと現実を受け入れている。

「鴨太くん、そんなに新幹線が好きになったの?」

らめが尋ねると、鴨太は「うん!また乗る!」と力強く宣言した。不思議なものだ。新幹線の車内ではあんなに興奮していたのに、らめに抱き上げられた途端、その腕の中にすっぽりと収まり、先ほどまでの騒ぎが嘘のように大人しくなる。彼にとっての「安全基地」は、もはや電車という鉄の塊ではなく、目の前のこの少女の胸元なのだ。

そのまま、高代が手配していた車が待つ駐車場へと向かう。都会の空気が、少しずつ大阪特有の活気と湿り気を帯びたものに変わっていく。

「さあ、あと20分ちょっとで着くわよ」

運転席の高代がバックミラー越しに笑いかける。

新大阪から都島区へ。鴨太にとっては、未知の場所へ向かう旅の最終区間だ。

車内でも、鴨太はらめの腕から離れようとしない。窓の外を流れる大阪の街並みをぼんやりと眺めながら、ときどきらめの首筋に顔を寄せて、ふん、と満足げに鼻を鳴らす。慣れない土地へ来たという不安は微塵もなく、ただただ「らめと一緒にいる」という事実だけが、彼を安心させていた。

高代が車を発進させると、車内は心地よい静寂に包まれた。

これから彼が通うことになる桜花中学校も、これから住むことになる環境も、全てはもうすぐそこだ。

(……ようやく、連れて帰ってこれた)

助手席でハンドルを握る高代の横顔には、親友遼子との約束を果たしつつあるという、静かな誇りが満ちていた。

都島までの20分は、鴨太にとっての新しい人生が本格的にスタートするまでの、ほんの短い予熱の時間だった。

車が都島区の街並みに入ると、窓の外の景色がより身近なものへと変わっていった。

助手席の高代がふとバックミラーを覗き込むと、後部座席でらめが鴨太を愛おしそうに見つめているのが見えた。らめは、長年の夢がようやく叶ったという感慨に浸っていた。小さい頃からずっと、東京にいる鴨太を思い、「いつか一緒に」と願っていた日々。それが今、この大阪の地で現実のものとなった。

「鴨太くん、やっと連れて来られたよ」

らめはそう囁きながら、鴨太の柔らかい髪をそっと撫でた。

「これから、ここは鴨太くんの家だよ。私が毎日一緒だからね。もう何も心配いらないんだよ。私が守るから」

鴨太の小さな体を抱きしめるらめの目には、慈愛が溢れていた。その温もりを感じ取ったのか、鴨太はふにゃりと顔を綻ばせ、らめを見上げた。

「らめちゃん……大好き」

彼がそう言ったかと思うと、次の瞬間、鴨太は自分から身を乗り出し、らめの唇へと顔を寄せた。

ちゅっ。

不意打ちの、小さくも熱いキスの音が車内に響く。

それはまるで、「ここへ連れてきてくれてありがとう」と伝えるような、感謝のお礼のようだった。らめは驚いて一瞬固まったが、すぐさまその無垢な愛情を受け入れ、堪えきれずに吹き出した。

「あはは!もう、鴨太くんったら、どこでそんなこと覚えたの?」

らめの笑い声に、運転席の高代もバックミラー越しに目を細めて笑う。

「本当に、この子は昔から一番美味しいところを分かっているわね。らめ、あんたもまんざらじゃない顔してるわよ?」

「ママ……!言わないでよ」

らめは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに鴨太をもう一度強く抱きしめた。

車内は笑い声と幸福感で満たされていた。鴨太にとっては、これから始まる新しい生活への期待と、大好きな相手への信頼が、あの小さな唇にすべて込められていた。

都島区の穏やかな住宅街に、鴨太という新しい風が吹き込む。それはきっと、この街にとっても、彼らにとっても、かけがえのない宝物のような日々になるはずだ。

車がマンションの敷地内に入ると、そこは鴨太にとって未知の光景だった。

「わあ……車が、空を飛ぶ!」

機械式立体駐車場のパレットが、無機質な音を立てて上下に動き、車を飲み込んでいく。本来ならば、好奇心旺盛な鴨太が飛び出して駆け寄ってしまう危険極まりない場所だが、今の彼には、らめの胸という絶対的な安全圏がある。抱っこ紐の中で、彼は目を輝かせてその「巨大なからくり」を見守っていた。

車から降りた高代とらめが駐車場で荷物を整えていると、マンションのエントランスから、一人の少女が軽やかな足取りで駆け寄ってきた。

「らめー!おかえりー!」

現れたのは、らめの幼馴染であり、保育園時代からの親友・船場エメリアだった。

イギリスとのハーフである彼女は、169cmという長身を持ち、誰の目にも止まるような圧倒的な美貌を誇る。らめが東京へ向かうときも、鴨太をどう受け入れるか、どんなサポートが必要かを一緒に真剣に考えてくれていた、心強い理解者だ。

「エメリア!待たせてごめんね」

「全然!鴨太くん、無事に来てくれたんだね」

エメリアは、らめに抱かれた鴨太を見ると、パッと花が咲くような笑顔を向けた。鴨太は何度か会ったことのあるエメリアを覚えていたのか、抱っこ紐の中から「エメちゃん!」と小さく声を上げる。

この投稿者をブロックする

ブロックすると、この投稿者名で投稿された記事が新着やカテゴリなどで非表示になります。

※データはブラウザに保存されるので、キャッシュを削除したり端末を変更するとブロックデータは消えます。


ブロック中の投稿者一覧

話の感想(件)

※コメントの上限:1万件

※ここは感想を述べる場です。雑談は雑談掲示板でお願いします。ルールを守れない方はアクセス禁止にします。
※コメントのいいね数はコメント投稿時に最新に更新されます。

まだコメントはありません。

話の感想を投稿する

内容 [必須:現在0文字]

名前

下記のコメントは禁止です。

・投稿された方のやる気を削ぐ内容。

・攻撃的な内容。

・悪口・暴言・誹謗中傷・荒らし。

・実話かどうかを問う内容。

・行動のモラルを問う内容。

・連載方針の変更を求める内容。(「今のシリーズは面白くないから次のシリーズにしてほしい」など)

・この先の展開を予想する内容やネタバレ。

・出会いを求める内容。

・この話に関係のない内容

・宣伝・勧誘等。

・個人情報の記載。


雑談は雑談掲示板でお願いします。

体験談については創作として捉え、不快な内容については読まないようにしてください。

守っていただけない場合はコメント投稿を禁止します。ご了承ください。


「つまらん!」「こんなもの投稿するな!」などと投稿する人がおられますが、その場合は「もっと描写を詳しく」「ここをこうしたら良くなる」など「投稿する方が次に活かせるコメント」をお願いします。

禁止事項を破ると過去全てのコメントが削除され、コメント投稿ができなくなりますのでご注意ください。

作品のイメージ画像設定

・作品本文TOPと新着リストに表示されます。

AI生成による画像ですか?



画像をアップロード
4枚まで(1枚:15MB以下)

※画像はすべて管理人がチェックし、問題があれば削除します。
※削除された画像を何度もアップロードした場合は下記のルールを読んでいないものとし、アップロード機能を凍結します。

※個人が特定できる画像、陰部の無修正画像、児童ポルノ、著作権上問題のある画像はNGです。
※目隠しの線がズレていたり細かったり薄かったりするのもNGです。
※AIで作成した画像であれば目隠しなしでOKです。
※エチケンでは実際に3人の逮捕者が出ています。アップロードするデータには十分ご注意ください。

解析グラフ

アクセスの解析データを見る
※表示に時間がかかる場合があります
※表示のエラーを修正しました。
(2020年05月28日)

体験談やHな話を募集中!

エチケンでは体験談やエッチな話を随時募集しています! 1日に10万人が訪れる当サイトにあなたの話を掲載してみませんか? 皆様のエッチな投稿を心よりお待ちしております!